東京BRTは巨大タワマン街「晴海フラッグ」の足になれるか 立ちはだかる4つの課題宮武和多哉の「乗りもの」から読み解く(3/5 ページ)

» 2024年02月05日 10時00分 公開
[宮武和多哉ITmedia]

課題(1)停留所の屋根などの整備

 実際に視察してみて、BRTが「Bus Rapid Transit」であるためには現状「4つの課題」があると考える。

 まず、東京BRTが「選手村ルート」運行を始めるにあたって、バス停など設備面の貧弱さはネックとなりそうだ。この「勝どきBRT」も含めてほとんど上屋(屋根)がなく、「勝どきBRT」では、雨が降ると乗客が「勝どきサ・タワー」の軒先に逃げてしのぐ、といった場面も見受けられる。

 開業に先立って18年に公表された事業計画書では、バス停に整備されるはずだった「上屋(屋根)の設置」「情報表示装置・デジタルサイネージ」など、ほとんどの設備が実現していない。今のところ、通常の路線バスとほとんど同じだ。

 停留所の上屋整備を手掛ける東京都都市整備局に問い合わせたところ、勝どきBRT・上りでは上屋整備予定があり、下りも(当初の予定通り)移転したのち、整備を行うとのこと。また、晴海フラッグ内では、9か所で上屋整備済とのことだ。

 ただし、今後の整備予定の中には、入札の不調(業者の申し出がなかった)などで、着手できていない案件もあるそうで、今後の進捗はやや不透明だ。

(2)運転本数・速達・優先信号は……?

 設備面と合わせて東京BRTがこれから取り組むべき課題、それは「(事業計画書並みの)運行体制の確保」だ。

 計画当初は、バス専用レーンやPTPS(交通優先信号。バスに合わせて信号を制御)で通常のバスよりスムーズに走行し、券売機導入(現金精算の場合)によって、運転手が車内で精算を行わなくてもよい運行体制が模索されていた。

 しかし、東京BRT・東京都によると、ほとんどの案件が「検討中」とのこと。またPTPSは一部区間で導入しているものの、もともと渋滞が激しい「月島警察署前」交差点では、運転手の方から「青信号の時間が少し伸びたところで、もともと混雑で詰まっているから効果はない」という声も出ているという。

 PTPSが効果を発揮するのは、レーンや専用道とセットでの整備が必要となってくるが、豊洲市場へのトラックが行きかう幹線道路(環状2号線)での車線確保は難しそうだ。速達に関する取り組みは、今後の利用状況、そして環状2号線の混雑状況しだい、といったところだろうか。

東京BRT 晴海フラッグ内には都営バスも乗り入れている

 ただ、今回開業する「選手村ルート」は、当初の目標「目標値20キロ以上」に対して、表定速度20キロを辛うじてクリアしている。このルートは晴海フラッグから新橋駅の間で環状2号線の陸橋を経由し、勝どき5・6丁目の交差点の頭上を越えていく。

 環状2号線の交通量じたいが当初計画(1日3.9万台)の6割少々とあって快適に走行できており、専用レーンはしばらく様子を見て、乗客が増加してからになりそうだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.