東京BRTは巨大タワマン街「晴海フラッグ」の足になれるか 立ちはだかる4つの課題宮武和多哉の「乗りもの」から読み解く(5/5 ページ)

» 2024年02月05日 10時00分 公開
[宮武和多哉ITmedia]
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「臨海地下鉄」開業後はどうなる? 今後の展望

 晴海フラッグと新橋エリアを結ぶ「東京BRT」は、将来的に銀座・東京駅方面への延伸も検討しているという。ただ、このルートは東京都が開業を目指す「都心・臨海地下鉄新線」(臨海地下鉄)計画があり、東京都もすでに「2040年までの開業を目指す」と公言している。なお、2024年2月には、「りんかい線」を運営する第3セクターの東京臨海高速鉄道が、事業計画の検討を進めていることが報道されたばかりだ。

 今の東京BRTの利用者は、新橋駅・虎ノ門ヒルズでJR・地下鉄に乗り換える利用者が多数を占める。もし地下鉄が開業すれば、「都心へのアクセス」という東京BRTの役割は失われるだろう。

東京BRT 「臨海地下鉄」計画図。東京都政策企画局資料より

 ただ、最寄り駅となるであろう「臨海地下鉄・晴海駅」(仮称)は、晴海フラッグから1キロもある。かつ東京都は排ガス規制が厳しく、数年でバス車両を手放す場合が多く、40年の開業までに、いま手持ちのバス車両は一巡するだろう。そう考えると、東京BRTへの投資は無駄ではない。

 ここは、BRTが「Bus Rapid Transit」であるための社会実験のような役割と割り切って、バスレーン・PTPS・車外精算などを全て完備した上で、しっかり経営が成り立つのかどうかという検証の場にしてみても良いのではないか。

 東京駅や都心に近い晴海フラッグだが、やはり「最寄り駅まで遠い」ことに変わりはない。オリンピックレガシーの活用という国策で誕生した分譲マンションを購入された方々のためにも、鉄道に近い使い心地のバスを提供してほしいものだ。

 その責務は東京BRT株式会社・京成バスだけでなく、東京都、国にもある。BRTと名乗ってみただけの”名ばかりBRT”ではない、「Bus Rapid Transit」というレガシー(遺産)をこの地で作り上げれば、のちのち各地で役に立つはずだ。

宮武和多哉

バス・鉄道・クルマ・駅そば・高速道路・都市計画・MaaSなど、「動いて乗れるモノ、ヒトが動く場所」を多岐にわたって追うライター。幅広く各種記事を執筆中。政令指定都市20市・中核市62市の“朝渋滞・ラッシュアワー”体験など、現地に足を運んで体験してから書く。3世代・8人家族で、高齢化とともに生じる交通問題・介護に現在進行形で対処中。

また「駅弁・郷土料理の再現料理人」として指原莉乃さん・高島政宏さんなどと共演したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」(既刊2巻・イカロス出版)など。23年夏には新しい著書を出版予定。

 noteでは過去の執筆記事をまとめている。


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