日本経済にはびこる「下請けいじめ」 巧妙化するその実態働き方の「今」を知る(3/6 ページ)

» 2024年02月16日 07時00分 公開
[新田龍ITmedia]

下請法が適用される場面

 下請法が規制対象としている取引は、主に次の4種類だ。読者諸氏の事業や所属する会社にも該当するかどうか、ご確認いただきたい。

製造委託

 物品の販売や製造をする事業者が、規格やデザイン、品質やブランドなどを指定して、他の事業者に物品の製造や加工などを委託するケース。

(例)自動車メーカーが、販売する自動車の部品の製造を部品メーカーに委託する

修理委託

 物品の修理を請け負っている事業者や、自社で使用する物品を自社で修理している事業者が、ほかの事業者に修理を委託するケース。

(例)家電メーカーが請け負った購入者からの修理作業を、専門の修理会社に委託する

情報成果物作成委託

 ソフトウェアや映像コンテンツ、デザインなどの情報成果物の提供や作成をする事業者が、他の事業者に作成作業を委託するケース。

(例)ゲームソフトメーカーが、ゲームソフト開発を他のソフトウェアメーカーに委託する

役務提供委託

 運送やビルメンテナンス、顧客サポートなどの各種サービス提供をする事業者が、その提供の全部または一部を他の事業者へ委託するケース。

(例)運送会社が、運送とセットで請け負った梱包作業を専門業者に委託する

親事業者(元請側)が果たすべき「4つの義務」

 元請企業は表の通り、「書面交付」「支払期日を定める」「書類作成・保存」「遅延利息支払」という4つの義務を負う。このうち、知らないうちに違反してしまっているケースが多く、実際に指導件数も多い前者2点について補足解説しておこう。

公正取引委員会「親事業者の義務

 まず下請け企業への発注時は、委託内容や金額、納期、支払期日などを明記した書面を発行し、交付することが義務付けられている(この書面における記載項目は、下請法第3条に規定されていることから「3条書面」とも呼ばれている)。

 なお下請取引においては、「言った・言わない」のトラブルが発生する恐れがあるため、口頭での発注は認められていない。また書面を発行していたとしても、必要事項を網羅できていなければ違反となってしまうため、もし下請企業との取引がある場合は、自社の注文書フォーマットが法令に準じているか、この機に改めて確認しておくとよいだろう。

 ちなみに、あらかじめ下請け業者から承諾が得られていれば、文書ではなくメールで必要事項をやり取りすることも可能だ。

公正取引委員会「親事業者の義務

 そして代金の支払期日については、発注した物品などを受領した日(役務提供の場合は、下請業者が役務を提供した日)から起算して60日以内のできる限り短い期間内で定める必要がある。

 例えば、普段「毎月20日締め、翌月末日払い」でやり取りしている元請企業が、下請会社から2月21日に納品されたケースを考えてみよう。通常であれば締め日は3月20日、支払いは4月30日となるが、それでは支払期日が受領日から60日を超えてしまっているので、違反となってしまう。このような違反を避けるためには、締日と支払日の間が1カ月以内となるよう支払制度を変更するなどの対処が必要となることに留意が必要だ。

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