建設業も同じく、元請け企業と下請け企業の間でパワーバランスが生まれやすい業界だが、実は下請法では建設工事にまつわる分野はカバーされていない。では、建設工事にまるわる下請け企業は保護されないのかというとそうではなく、また別の法律「建設業法」によって保護されている。
それぞれの内容に細かな違いはあるものの、立場が比較的弱い下請事業者を保護する目的であることは変わらない。
下記を始めとする義務・禁止事項を定め、下請事業者の権利を保護する内容となっている。
また中小企業庁でも、「下請適正取引等推進のガイドライン」を定めており、以下のような内容を規定したうえで、定期的にバージョンアップされているのでご確認いただきたい。
さらには下請法とは別に、「独占禁止法」という法律があり「優越的地位の濫用」を禁じる規定がある。これは元請・下請の関係がなくとも、取引上の地位が相手方に優越している事業者が、取引の相手方に対し、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることを禁じたものだ。
(例)
信託銀行大手「三井住友信託銀行」と、太陽光開発ファンドを運営する「GIキャピタルマネジメント」が資金を投入した太陽光発電所建設プロジェクトに関して、施主であることの優越的権限によって下請け事業者に対して請負外の工事を要求。請負側が反発すると、工事書類に押印をしないなどの妨害をして工事を止めたほか、台風によって崩落した工事も追加施工させ、完工後売電収入を得ているにもかかわらず、請負代金不払いの上、台風復旧等追加請求も受け付けず逆に台風で工事が遅れたことによる遅延金を支払うよう下請け会社を提訴。現在公判中。
いかがだろう。読者の中にも「もしかしたら自分たちも下請けいじめに遭っていたかも……」、もしくは「まずい! 気が付かないうちに自分たちが下請けいじめに加担していたかも……」といった気付きがある方がおられたかもしれない。
特に昨今は世界的なエネルギー価格や原材料費の高騰もあり、発注側が取引価格にコストの上昇分を反映しなければ、下請側の中小企業に負担が集中しやすいご時勢でもある。公取委は毎年、親事業者や下請け事業者に書面による定期調査を実施しているが、22年末より担当職員を50人増員して執行体制を強化しており、下請法違反や優越的地位の乱用の監視に力を入れている。中には、「下請事業者から値上げ要請がなかったため、取引価格を据え置いていたまま」の元請企業が指導を受けたケースも存在する。
ぜひ発注側の企業各社におかれては対岸の火事と思われることなく、本記事を契機に自社の下請け取引に問題がないか、あらためて社内の法務・コンプライアンス部門や顧問弁護士に確認されることをおすすめしたい。
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