株価が史上最高値をつけても、83%が「景気がよくなっている実感がない」とし、春闘で満額回答が相次いでも、76%が「物価上昇を上回る賃上げが実現できない」と回答したことがNHKの調査で明らかになりました。
確かに……全く実感ないですよね。
これまでもメディアは株価に一喜一憂し「戦後2番目の好景気を実現した!」などと大騒ぎしてきましたが、その度に「これってどこの国の話?」感がありました。特に今回は「賃上げラッシュ!」といった超前向きな言葉が飛び交っているだけに、疎外感を抱いている人が多いのではないでしょうか。
日本社会はずっと、ごく一部のエリートによるごく一部のエリート層をモデルにしたカタチで動いてきました。
働く人の7割が中小企業で働き、4割が非正規で雇用されているのに、“スポット”が当てられるのは働く人の3割にも満たない「大企業の長期雇用の正社員男性」です。おかげで“それ以外”との格差は一向に解消されていません。
ご覧の通り、入社当初は企業規模、雇用形態、性別でさほど変わらない賃金が、30歳以降どんどんと広がり、同じ条件でも男女で違いが大きいことが一目で分かります。
例えば、男性の正社員の賃金がピークとなる50代後半で比較した場合、男性43万1000円に対し、女性は31万400円。男性の非正規24万7300円に対し、女性は19万9800円です。
さらに、男性の場合は大企業で約39万円、中企業で約33万円、小企業で約31万円に対し、女性は大企業で約28万円、中企業で約26万円、小企業で約24万円と全ての企業規模で低賃金です。
企業規模別の賃金格差は男性のほうが大きくなっていますが、同じ大企業でも男性と女性で10万円以上も違うのは、もはや異常としか言いようがありません。
この連載では繰り返し「非正規=低賃金が当たり前なのは日本だけ」と問題提起してきましたが、男女でここまで賃金差があるのも日本特有の問題です。2022年の経済協力開発機構(OECD)のデータによると、日本の男女の賃金格差は21.3%で、OECD加盟国平均11.9%の約2倍です。
米国17%、英国14.5%、北欧では多くの国が10%を下回っているのに、日本だけが1986年の男女雇用機会均等法のタイミングで社会人となった女子大学生が最初に定年を迎える年になってもなお、男女差が解消されていないのです。
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