このように機能性表示食品にとって「リスク」にしかならない環境が整っていく中で、ここからは小林製薬の危機管理担当者になったつもりで想像していただきたい。
24年1月以降、全国各地の「かかりつけ医」などから、紅麹のサプリメントを摂取した患者に「健康被害」が確認されたとの報告が次々と入ってきた。多くの人は先ほどの「常識」と照らし合わせれば、きっとこんな風に危機感を抱くのではないか。
「機能性表示食品制度をつぶしたくてしょうがない医療界に、次々と健康被害の情報が集まっている。これは対応を間違えると、制度そのものがひっくり返る問題になるぞ」
もちろん、こういうものはセンスもあるので、どこまで危機感を抱くのかは人それぞれだろう。ただ、少なくとも「健康被害の報告がたくさん出てきたけれど、まだ原因も特定できないんだから公表も報告もしなくていいか」とはならないのではないか。
しかし、小林製薬はそういう「悪手」を取った。一般消費者に健康被害が拡大している局面で、「原因究明よりも顧客の安全を優先する」という危機管理の鉄則を無視して、「社内論理」を優先した。結果、自社だけではなく「機能性表示食品制度」全体を“地獄への道連れ”にしてしまった。
「結果」を厳しく判断させていただくと、小林製薬の社内には残念ながら、この問題がこれからどう発展していくのかと先読みをした「リスクシナリオ」を描ける人材、または「危機管理のプロ」がいなかったのではないかと思わざるを得ない。
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