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“NVIDIA一強”に低コストで勝負 米AI企業CEOに聞く「一緒に働きたいエンジニア」「サンバノバ」の正体【後編】(2/2 ページ)

» 2024年05月13日 08時00分 公開
[河嶌太郎ITmedia]
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今はまだ全体の5% 生成AIの未来は?

――500人以上の従業員を持つ企業の経営者として、気を付けていることは何ですか。

 おのおのが、自分の仕事を自分の力でできるようすること。これが重要だと思います。私たちがどこに行こうとしているのか、そのゴールをクリアすることで、どんな意義を持つのか。ここを明確にすることによって人が集まってきて、具体的なプランが生まれてきます。

 トップダウンによって「これをやってほしい」と命令することもできるのですが、そうじゃないんですね。私の頭1つで全てを網羅することはできません。私たちが困難だと捉えるべき部分は、私たちがまだ気が付いていないところにあります。それは、私たちの周りの専門家によって気付かせてもらっているんです。

――生成AI時代はまだ始まったばかりです。今後どのように変わっていくとお考えですか。

 AIもインターネットと同じだと思っていまして、われわれがやること全てにAIは関係してきます。いつも毎時間毎分のように、私たちがどこに行ってもそこにAIが存在するようになってきます。今はまだ全体の5%ほどにしか到達していないと思います。

 これはインターネットが始まった時のことを思い返すと分かりやすいです。1990年代後半では、どれくらいの人がインターネットを活用していたでしょうか。5%くらいだった時期がありました。今ではスマートフォンの普及もあり、95%以上の人が当たり前に使っています。インターネットと同じような旅路を、生成AIでもたどっていくと考えています。

――各企業がWebサイトを立ち上げたように、企業が固有にAIを持つ時代も来るように思います。

 ビジネスAIは、汎用とプライベートのハイブリッド型なんですよね。複数のハードのソリューションがそこに存在して、複数のソフトのソリューションも存在します。そこにはChatGPTのような広汎な公共のモデルがある一方で、ビジネスAIのようにプライベートデータの安全安心を100%担保しなければならない世界もあります。医療分野など、この両者を柔軟に考えなければならない領域もあります。

 企業にとってこれから課題となるのは、今自分の会社で、どの部門が何を使っているかを正しく把握するところだと思います。そこには、パブリックで必要な部分がいくつかある一方で、プライベートなソリューションも一部あるでしょう。共有できるものと、共有できないものがあると思います。同じ企業のAIでも、こうした別々のモデルが存在するわけです。これらをいかに企業として管理できるのか。それを考えなければなりません。

――生成AIが企業に入り込むことによって、社員の働き方はどう変わっていくのでしょうか。

 地球上に存在しているナレッジワーカーは、例外なく生産性が10倍上がると思います。なぜ10倍なのかというのは、インターネットによって1人1人の生産性が10倍に上がったからなんです。

 その上で、われわれが普段インターネットを使って何に時間をかけているのか考えると、それはリサーチの部分だと思います。調査して、情報を整理するところに時間を使っています。こうした調べ物の作業は、全てAIでできるようになっていきます。

――スピードがさらに10倍加速する一方で、最終的な判断や行動に移すのは人間に変わりはないと思いますが、いかがでしょうか。

 そうですよね。その部分は全く変わっていないと思います。私が会社を立ち上げた時のことを思い出すのですが、まず「これからどこに行きたいのか」というアイデアがありました。作品を例にしても、ある人が本を書く場合、まず「この人が何を書きたいのか」という構想があるわけですよね。

 自分の時間をどこに最も多く割くべきなのか。その意味でのコンビクション(信念)は、やはり人間が決めるところですよね。「これをやるんだ」という、自分のコンビクションです。ただAIによって、その判断はより簡単になると思います。

 インターネットの例で考えると、インターネット登場以前は、大企業しかグローバルビジネスができませんでした。ところが今は、社員1人であっても、ガレージでインターネットを通じて、いろいろな事業ができるようになっています。AIが動くことによって、さまざまな参入障壁が下がってマーケットに入れるようになるでしょう。これはインターネットの歴史からも学べると思っています。

――最後に、シリアルアントレプレナーとして、優れた起業家の条件をどのように見ていますか。

 まず自分の信念が大事ですね。新しいマーケットを見通す力も大事になってきます。この見通しは、直線的でないことが多く、上がったり下がったりという動きになってきます。リーダーとして、フォーカスしたことから離れないことも大切です。私たちは何のために存在しているのか。そこをきちんと意識することが大事です。

 時代の流れによって上に行ったり下に下がったりしたとしても、そこで自分を見失ってはいけません。結局チームメンバーは、正しいゴールをきちんと見ている「あなた」という人に依存しているわけですから。やはり経営者の信念が大事になってくるのだと思います。

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