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DeepL、エンプラ向け翻訳ツールに注力 “AI搭載”で社内翻訳チームはどう変わる?(2/2 ページ)

» 2024年06月14日 08時49分 公開
[河嶌太郎ITmedia]
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日本でのデータセンター設置も視野に

――日本の営業を強化するにあたり、今後の戦略をどう考えていますか。

 今後はエンタープライズへの営業をより強化していきたいと思います。われわれとしてもまだ始めたばかりのサービスですし、この1年間の進捗は非常に満足しています。

 DeepLはエンタープライズの翻訳ツールとして、欧州ではトップシェアを獲得しています。日本だけでなく、世界の各地域でもより複雑な大企業のニーズを拾い上げ、そのソリューションを提供していきたいと思います。

 他には、インフラ整備も進めていきたいと考えています。現状、DeepLのデータセンターや翻訳機能をつかさどるサーバは全て欧州に置いています。しかし、それだと日本など遠隔地からのアクセスでは、翻訳速度に多少影響が出ています。

 データセキュリティ面の問題からも、ユーザーからは国内でのサーバ設置を望む声もあります。こうした問題を解決するために、日本国内にもデータセンターを設置するなどインフラ整備が課題であり、解決策を検討しています。

――オラクルなど他のIT系企業でも、日本にデータセンターを設置する動きが進んでいます。

 日本は一般的に見て大きな市場なので、世界的大企業が日本に投資するのは当然で、とてもよく理解できる動きです。DeepLも、日本市場は早い段階から非常に重要な優先的なマーケットだと認識し、オフィスの開設や人員の採用を進めてきました。この動きもそういった流れの一環だと思っています。

――いま「ソブリンAI」と呼ばれる、地域や国レベルでAIを構築する考え方を、NVIDIAなどが提唱しています。この動きはどう見ていますか。

 DeepLは欧州に大半のデータセンターがあるのですが、現状でも日本のユーザーの基準は満たせていると考えています。欧州自体が世界的にとても規制が厳しく、高いレベルでのデータセキュリティの取り組みが進んでいますし、当社としてもセキュリティには高い基準で取り組んでいます。一方で、データの所在地であるデータレジデンシーの問題はありますので、データの一部を日本国内に移管する動きは出てくると考えています。

――昨年は日本政府を始め各国の政府関係者とお会いしていたと思います。どんな話をしていたのでしょうか。

 世界各国の行政関係者の方々と話をしています。昨年は特に多く、今年に入ってきてからは落ち着いています。主にはAIの規制周りの話をしていましたね。

――経営者として大事にしている考え方を教えてください。

 一番大切にしている点は、私自身が誠実でオープンであり続けることです。思っていることを誠実に話すことを心がけています。これによって、社員の人たちも信頼してついてきてくれるのだと思います。

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