「ITもデザインも得意ではない私でも、まるでデザイナーが作ったような動画を制作できている」――そう語るのは、神奈川県内でトヨタの新車や中古車販売、車検や点検を中心に手掛けるウエインズトヨタ神奈川(横浜市)の吉田朱里さん(営業推進部 戦略企画室 メディアプロモーショングループ)だ。
吉田さんが所属するメディアプロモーショングループは2023年4月に新設した組織で、広報や販促など、情報発信にまつわる領域を横断的に担当している。積極的なSNS活用と、コンテンツ制作におけるアドビのツール活用やフローの見直しにより、数百万円規模のコスト削減効果が得られ、認知度の向上にもつながっているという。
自動車の販売店、いわゆるディーラーを運営する企業とクリエイティブなデザインツールの組み合わせは、一見意外にも感じる。いったいなぜ導入し、どのように活用しているのか。背景には、自動車販売店にとどまらない課題意識が隠れていた。
ウエインズトヨタ神奈川は2023年1月に設立。もともと神奈川県内で同様にトヨタ車の販売を手掛けていた横浜トヨペット、トヨタカローラ神奈川、ネッツトヨタ神奈川が合併した。同社の宮石真希子さん(まちいちばん支援部 部長)は、同社について次のように紹介する。
「当社が属するウエインズグループでは、新車・中古車の販売、さらに輸入車の取り扱いやレンタカー。こうしたもの以外にも、警備や旅行代理店業務などを展開しています。また、同じトヨタのディーラーでも、神奈川県内には当社の他にもう1社があり、トヨタとの資本関係はない、独自資本でそれぞれ経営しています」
自動車業界は今「100年に一度の大変革期」と言われている。コネクテッド(Connected)、自動化(Autonomous/Automated)、シェアリング(Shared)、電動化(Electric)の頭文字である「CASE」への対応を各社が競っており、従来のサプライチェーンや付加価値を見つめ直し、改革する必要性に迫られている。
業界の今後を考えると、上述したような「モノづくり」の側面以外にも目を向ける必要がある。具体的には、少子高齢化や価値観の変化などが該当する。
例えば、デロイト トーマツ コンサルティングが2023年11月に発表した「Post COVID-19の移動に関する消費者意識調査」では、年代別の自動車保有割合が明らかになっている。調査結果によると「保有経験なし」と回答した18〜29歳は、2018年に45.8%だったところ、2023年には52.9%と半数以上に達した。30代以降はおおむね20〜30%台にとどまっていることを考えると、若年層の「クルマ離れ」は突出した傾向といえる。
ウエインズトヨタ神奈川県でも、若年層へのアプローチが課題になっていた。
神奈川県内における自動車のうち、軽自動車を除いた同社のシェアは25%(2019年実績)。トヨタにマツダ、ホンダに日産、ダイハツやスバルなど、自動車メーカーも数多くあり、嗜好が多様化していることも考えるとそれなりのシェアにも感じるが、客層の高齢化に対する危機感は強い。
「日本全体の人口動態と同様に、当社のお客さまも高齢化が進んでいます。川崎や横浜エリアは人口動態に近い状態ですが、エリアによってはさらに高齢化が進行しているところもあります。もちろん既存顧客である高齢なお客さまのエンゲージメント強化も重要ですが、それとともに若年層の取り込みが大きな課題です」(宮石さん)
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