飲みづらいグラスの開発は、どのように進んだのか。「カタチをどうすればいいのか?」といった議論から始まって、いろいろな案を出し合った。例えば、グラスにセンサーを搭載して、手を近づけるとグラスが離れていくようなモノはどうか。ものすごく重くして、簡単には持ち上げられないモノはどうか。
アイデアは30案ほど集まって、その中から砂時計のような形状に決まった。理由は2つあって、1つはビールの味わいや香りを感じたいから。もう1つは、ゆっくり飲めるから。「ビール」と聞くと、キンキンに冷えたモノをできるだけ速く飲んだほうがおいしいのでは? と思われるかもしれないが、同社が扱っているのは「エールビール」ばかり。ラガービールと比べて飲み頃の温度は高めなので「ゆっくり飲める」ことにこだわったのだ(ラガービールは6〜8度、エールビールは8〜13度がオススメとされている)。
砂時計のような形状に決まったものの、問題はくびれのサイズである。試作グラスを6種類つくってみて、実際に飲んでみることにした。内径5ミリ、6ミリ、7ミリ……をつくったところ、5ミリの場合、味や香りがあまり感じられないという課題があった。「ビールは点滴のように『ポタ、ポタ』と落ちてくるような感じでして。ゆっくりすぎるということで、却下となりました」(担当者)
7ミリ以上になると、ビールがたくさん流れきて、「ゆっくり飲めなかった」のでこれも却下。結果、味も香りもしっかり感じられて、理想とするスピードで飲めるということで、くびれのサイズは「6ミリ」に決めた。
グラスには350ミリリットルの缶1本分がちょうど入って、飲み干すのにかかる時間は、通常のグラスに比べ3倍ほどかかるという。ビールを注いで、グラスを傾けるとどんな音がするのか。当然、「コポ、コポ、コポ」である。
さて、飲みづらいグラスの反響はどうなのか。受付期間は7月16日〜8月16日までなので、まだまだ途中であるが、18日12時時点で「1300件以上」の申し込みがあったそうだ。受付が始まって3日も経っていないのに、倍率は130倍である。社内からは「200〜300個の申し込みがあったらいいよね」といった声が多かったので、この数字に担当者も驚きを隠せない様子だった。
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