2012年に小田島氏が入社し、徐々にDXを進めていったゑびや。手作業の事務業務などに逼迫され、「安いけれどおいしくない店」とまで言われてたお店は、現在連日のように多くの客で賑わうようになった。また、同社は食堂を中心としていた事業形態から、BIツールの開発・販売、不動産投資、宿泊業、ボードゲームの作成・販売……など、どんどんビジネスの幅を広げている。
「グループ会社も合わせた現在の社員数は50人弱。年商は12億円強です。私が入社した頃は約40人の人数で年商1億円前後だったので、この12年間で大きく成長しましたね」
売り上げは大幅に増加しているにもかかわらず、従業員数はほとんど変わっていない。その秘訣について、小田島氏はこう説明する。
「私たちの拠点は三重県の伊勢市です。地方には、都会のように人は多くありません。だから、採用に頼らず今いるメンバーでなんとかしよう、と試行錯誤してきました」
「私は、事業を考えて形にするのは得意。でもそれを限られた人数で運営するためには、これまでの作業時間を短縮する必要があります。そのために取り組んだことが、事務作業のDXです。事務作業をできるだけ減らして、できた余白で従業員に新しい事業にチャレンジしてもらう。12年間、このやり方で売り上げと利益を伸ばしていきました」
先ほども紹介したように、ゑびやは現在食堂だけでなく、さまざまな事業に取り組んでいる。どんな基準で新規事業を立ち上げるのか小田島氏に聞いたところ、「従業員がきっかけとなることが多い」と教えてくれた。
「面談で従業員の希望を聞いて、それを新規事業のヒントにすることは多いですね。例えば、『英語を使って仕事がしたい』というメンバーが何人かいて。ご縁があった貿易会社をM&Aで取得し、そのメンバーに事業運営をお願いしています。EBILABのエンジニアにも、もともとは店舗で接客をしていたメンバーが何人かいるんですよ」
従業員の希望とはいえ、未経験の職種や業種を任せるのは、不安に思う経営者も多いはず。そう小田島氏に問いかけたところ、「人の可能性を信じて、任せてみる。そうすると、意外とうまくいくことって多いんですよ。“やりたい”と思う気持ちは、何にも勝るエネルギーですからね」と笑顔で話した。
最後に小田島氏は、ゑびやのような地方企業のこれからについて、独自の考えを語ってくれた。
「地方のビジネスは、ある特定の分野に依存したモデルになっていることが多いと思っています。例えば以前のゑびやだと、“伊勢神宮から徒歩1分”という立地に依存していました。そのため食堂中心の事業展開をしていたのですが、今は日本全国、そして海外からも収益を得る仕組みをどんどん整えていっています」
「これからは、ゑびやに限らず他の地方企業も何かに依存しない戦い方が求められてくるはずです。これからも適宜事業ポートフォリオを変えていきながら、業種や場所にとらわれずに会社を成長させていきたい。そのためにも、テクノロジーの力を上手に使っていきたいですね」
100年以上の歴史を持つ老舗食堂を、テクノロジーの力でよみがえらせた小田島氏。その挑戦は、日本の地方企業の新たな可能性を示している。ゑびやの復活劇は、人口減少や後継者不足に悩む多くの地方企業にとって、貴重なヒントとなるだろう。
「ごみを売るなんて!」反対の声も 火事の元になる厄介者「今治のホコリ」が売れたワケ
営業マンからバリスタへ 68歳男性がスタバでフラペチーノを作る理由
「セコマ」はなぜ、レジ袋無料を続けるのか トップが「これでよかった」と語る背景
日本人はなぜこれほどまでに「学ばない」のか 背景にある7つのバイアス
ヤマダデンキ、JR東、高島屋も……各社が急速に「銀行サービス」を開始したワケ
「時短社員」のフォローに限界……会社が今すぐ取るべき対策は?
20代で「モンスト」開発部長に スピード出世を遂げたMIXIエースの「マネジメント論」Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング