700万人が訪れた「びっくりドンキー」系列の“エコ”な観光施設 「いいこと」アピールしない哲学北海道・恵庭からリポート(2/4 ページ)

» 2024年08月21日 08時00分 公開
[大村果歩ITmedia]

資源循環の取り組みも多数 アレフはリサイクル率「95%超」

 同施設では資源循環を意識した取り組みも多く実施している。ウェルカムセンターでは冬の期間、使用済み油などを燃料に廃油ヒーターを稼働させ、施設内の暖房に活用している。廃油は施設周辺のびっくりドンキー店舗のほか、恵庭市内の小学校と連携して回収。小学校に対しては、100リットル回収するごとに500円分の図書カードを送り、環境に関する書籍などを購入する費用に充ててもらうそうだ。

 「恵庭市の小学校では、子どもたちがペットボトルに廃油を詰めて持ってきてくれます。恵庭市で育った子どもたちは、もしかしたら廃油は捨てるものじゃないと思っているかもしれませんね」(青木さん)

環境 廃油ヒーター(筆者撮影)

 他にも、地中熱ヒートポンプを設置し、冷暖房に活用している。深度約100メートルまで掘削された孔内(穴)を使い、年間の温度変化が外気より少ない地中と熱交換することで、通常の空気熱源ヒートポンプと比べて省エネ効果があるという。

環境 えこりん村の「てんぷら油回収ボックス」(筆者撮影)

 施設に隣接する同社事務所の電力は、バイオガスプラントで発電する。びっくりドンキーで提供する「ドンキーハウスビール」などを製造する小樽ビール醸造所から発生するビールかす、生ごみ資材などをメタン発酵させ、回収したバイオガスを燃料に発電。隣接する事務所で使用する電力の約6割は、バイオガスプラントで発電した電力で賄う。

 「メタン発酵後の残渣(ざんさ)は液体肥料として牧草地に散布し、その牧草で羊を飼育する、といった循環の取り組みをしていることも特徴です。年間800立方メートルほどの液体肥料を製造しています」(葛西さん)

環境 バイオガスプラントで事務所内の電力を賄う。北海道では冬の時期に牧草が採れないため、液体肥料を使いながら夏の期間にたくさん育て、冬に備えているという(筆者撮影)

 資源循環や環境配慮の取り組みは、えこりん村だけで強化しているわけではない。アレフでは、食品廃棄物再生利用などの実施率が95%を超える(2022年度実績)。びっくりドンキー各店には「生ごみ処理機」を設置し、生ごみを一次発酵して資材に変えている。資材は全国の協力農場で堆肥化している。

環境 えこりん村で展示されている生ごみの資材。資材は堆肥として農場で活用している(筆者撮影)

 生ごみ処理の取り組みは1997年から開始。当初は1店舗1日当たり50キロほど生ごみを排出していたが、現状は食品ロスの低減活動の取り組み強化により20〜30キロほどに減っている。

 「最近は小さいサイズを用意するなど、メニューの見直しもしました。びっくりドンキーは『大きい』『ガッツリ』というイメージがあると思いますが、そういったイメージにとらわれすぎず、ニーズの多様化に対応できるよう取り組んでいます」

 「一方で、当社は炊き上がり90分以内のものしか提供していないこともあり、どうしてもご飯が余ってしまいます。ご飯の廃棄は、現状もまだ課題ですね」(青木さん)

【お詫びと訂正:2024年8月21日午前10時10分 文章の一部を修正いたしました。訂正してお詫び申し上げます。】

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