同社がえこりん村を運営する中で、2つ重視することがある。
1つ目は体験を通じて伝えること。実際に手や体を動かし、来場者に体験してもらうことを意識している。2つ目は、楽しそうにすることだ。
企業のSDGsに対する取り組みは、消費者や顧客に認知されればそれで良いのでは? という考え方もあるが、そもそも同社はえこりん村で、そこまで自社のSDGsに関する取り組みをアピールしていない。
「『うちの会社はこんな良いことをやっているんだ』と伝えたいわけではないんです。本当に地球環境を心配しているから、多くの人にまずは環境問題を自分事化してもらいたいと考えています」(青木さん)
環境問題に関する話題は、「難しそう」「勉強っぽい」という印象を持たれ、敬遠されやすい。これらを自分事化してもらうには、資料や展示を読んでもらうだけではなく、体を動かし、体験してもらうことの方が効果的だと考えた。「楽しく」「分かりやすく」伝える工夫を随所に凝らす。
例えば、体験を意識した展示物を制作しており、先述した廃油ヒーターにも中をのぞける仕掛けを用意。取材時も子どもたちが「何これ!」と興味津々でのぞいている様子を目にした。
「実際に体を動かし、『疲れたな』『おいしかったな』などと感じてもらう方が、すっと入ってきやすいですよね。1冊の本に値することが、1〜2時間の体験で得られるんじゃないかと思ったのです」(青木さん)
「体験」と「楽しさ」を重視する。えこりん村の考えを最も反映しているのが、子ども向けの教育プログラムだ。同社は持続可能な開発のための教育(ESD)の推進も強化している。
2007年から小学3〜6年生を対象とした環境教育プログラム「えこりん村学校・えこりん村の子どもたち」(以下、えこりん村学校)を実施。親子向けの単発のプログラムと、子どもだけで参加する長期のプログラム、2種類を用意する。
長期プログラムでは、4つのテーマ(米、羊、野菜、森)に分かれ、総勢100人が参加する(各25人)。半年間、月1回のペースで、さまざまな活動に取り組む。例えば、羊コースでは毛刈りや羊毛アート体験、野菜コースでは種まきから収穫だけでなく、収穫した野菜を調理して食べたり、袋詰めや値付け、販売など、直売所で野菜を売る模擬体験も用意している。
えこりん村学校は非常に人気だ。教育委員会などと連携して地域の小学校にチラシを配布しているが、兄弟が参加したなど、口コミでも認知が広がっている。Webサイト経由での申し込みは、募集初日で定員100人全て埋まる。1番人気の羊コースは、開始1分で完売するほど人気だという。
青木さんは「えこりん村学校は、子どもたちにとってサードプレイスになっているようだ」と話す。
「学校や家庭以外で自分の居場所を探している子どもたちが多く存在します。学校などで自分の居場所を作ることに困っていた子が、自分らしさを取り戻し、新しい友達を作れたと保護者の方から感謝の言葉をいただくことも。こういう言葉を聞いて、えこりん村学校を続ける意義を強く感じています」(青木さん)
最近では、同窓会のイメージで過去の参加者を対象に中高生向けに単発のイベントを実施したという。「人間関係が切れるわけではないので、少し大人の考え方で出会えるのは面白いですよね。今後は大人向けの教育プログラムなども提供していきたいです」(葛西さん)
人口1075人の村でも黒字を実現 セコマ会長が「過疎地への出店は福祉ではない」と語る理由
「セコマ」はなぜ、レジ袋無料を続けるのか トップが「これでよかった」と語る背景
「ごみを売るなんて!」反対の声も 火事の元になる厄介者「今治のホコリ」が売れたワケ
営業マンからバリスタへ 68歳男性がスタバでフラペチーノを作る理由
セコマの店内調理「ホットシェフ」 なぜ道民に愛されるのかCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング