地域性など需要の違いによって、同じ年式の同モデルでも、価格の高い中古車もあれば安い中古車もある。単に走行距離の違いだけの場合もあるが、それ以外にも付加価値を与えているケースも存在する。
欧州車やスポーツカーなどを専門に扱っている中古車店などは、入庫してから入念に点検整備を施してコンディションを整えてから商品化しているところもある。
専門店は在庫が豊富だが、購入後にメンテナンス費用がたくさんかかったり、故障続きでろくに乗れないなどの問題が起こったりすれば、たちまちユーザーは離れてしまう。長くビジネスを続けている専門店は、ユーザーに満足してもらえて、自分たちも効率よく仕事をこなせる方法を採っていることも多い。
また、車両価格が安いのは中古車販売店の事情が絡んでいる場合も多い。下取り車として入庫したが、専門外の車種のため整備点検せずに現状販売で早く手放したい、というケースが代表例だ。
EVのリセール性の低さは、バッテリーの寿命が予測できないだけに、当分は改善が難しそうだ。認定中古車としてバッテリーを交換した個体は今後、徐々にリセール性を高めていくだろうが、根本的な問題としてEV=バッテリーの価値である状況はなかなか変わりそうにない。
最近のクルマはメンテナンスフリー化が進む一方で、電子制御が複雑化し、点検や簡単な修理(バッテリーやオイルの交換など)もディーラーの専用診断機を利用しなければできなくなっている。
ドイツ車の中古車が割安なのは、国産車と違い、5〜6年も日本の環境で使用していると部品の故障率が高まり、メンテナンス費用がかさむからだ。
最近のクルマは部品の樹脂化が進み、気候変動の影響もあって保管状況によるコンディションの差が広がる傾向にある。そのため、今後ますます中古車の価格を決める要素は複雑化していく。ガソリンの価格や供給動向がどう変化するかによっても、中古車の価値は変わっていくだろう。
芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmedia ビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。著書に「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。近著は「きちんと知りたい! 電気自動車用パワーユニットの必須知識」(日刊工業新聞社刊)、「ロードバイクの素材と構造の進化」(グランプリ出版刊)。
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