「あの商品はどうして人気?」「あのブームはなぜ起きた?」その裏側にはユーザーの心を掴む仕掛けがある──。この連載では、アプリやサービスのユーザー体験(UX)を考える専門家、グッドパッチのUXデザイナーが今話題のサービスやプロダクトをUXの視点で解説。マーケティングにも生きる、UXの心得をお届けします。
「ゴルフですか? 始めたいとは思っているのですが……。クラブも持っていないですし……」と、さりげなく断ったことが何度あるかすら覚えていない。
仕事に追われ「ゴルフどころじゃない」「休日まで上司や取引先のご機嫌取りなんて」という本音をひた隠しにし、何年もお茶を濁してきた。
秋が深まるこの時期、ビジネスシーンで交わされがちなゴルフの誘いに、そういった経験を持つ人も少なくないのではないでしょうか。しかしその考え、少し損をしているかもしれません。
実はゴルフには、ビジネスパーソンほど愛してしまう奥深い楽しみが詰まっているといいます。ビジネスの場で活躍する人たちの中には、ゴルフを通じて気付いた「ビジネススキルを向上させる秘密」があるのだとか。
ソフトバンクグループ創業者の孫正義氏やファーストリテイリング会長の柳井正氏も魅了したゴルフの魅力を、ゴルフ未経験の筆者が、ユーザー体験と行動経済学の観点を交えて考えてみます。
先日、当社は全社員が集まる総会を開催しました。プログラムの一つである、役員や事業責任者などによるパネルディスカッションの中で、こんな話があったのです。
「商談成功の秘訣は?」と尋ねられたグループ会社のCEOは、意外にも「ゴルフかもしれません」と回答。なぜ、ゴルフで商談がうまくいくのか。気になった筆者は後日、その真意を直接本人に尋ねました。すると、思いもよらない角度からゴルフが持つ独自の面白さについて語ってくれました。
曰く、ゴルフは「一打一打が成功への仮説検証の連続」だといいます。ゴルフのショットには成功の型があり、そのショットが成功するか、それとも失敗につながるかがその場で明らかになります。野球やサッカーのように自己流のアレンジで上達するのではなく、いかに成功に近い型を出せるかが勝敗を分ける。
つまり、成功の型に近づくために「こう打てばいいショットになるだろう」という仮説を立てて試し、その結果(スコア)を確認するという検証を繰り返すことで、最終的な成果が左右されるのです。
ビジネスでの判断も同様に、一つの行動が成功に結びつくかどうか、仮説に基づいて検証しながら進めることが重要です。ゴルフは、ビジネスパーソンが「自分のアクションを試す場」としての魅力に満ちているといえそうです。
また、ゴルフには走り込んだりする激しい運動を伴わず、強い筋力も必要ありません。上達のためのトレーニングはショットを繰り返すこと、というシンプルさも、マインドシェアの多くを仕事に割きたいビジネスパーソンに好かれる要素なのかもしれません。
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