企業における経営管理の実態は、いまだに手作業とExcelが主流だ。マネーフォワードの調査によると、顧客企業の90%以上がExcelでの管理に課題を抱えており、必要な数値にすぐにたどり着けていない状況が明らかになっている。予算策定から経営分析、予実管理まで、多くの企業がExcelで対応している。M&Aの増加やグループ経営の進展によって、より高度な経営管理へのニーズが高まっているが、システム化が追いついていないのが現状だ。
バックオフィスの各種機能が次々とSaaS化されてきているが、予算策定や予実管理、着地見込みの推計などの経営管理は、ほとんどがExcelで行われている。そしてその9割が課題を抱えている(Manageboardの調査より)課題の一つが属人化だ。予算策定では、多くの企業が組織の変更や各社のビジネス特性に応じて独自のExcelを作成し、運用している。島内氏は「こうした個別の運用は引き継ぎが難しく、今は人手不足も深刻になってきている。その人がやめてしまった時には後釜の人もすぐ採れない」と、Excelベースの経営管理における属人化リスクを指摘する。
一方で経営管理システムに対する企業の姿勢も変わりつつある。外資系製品は大企業向け市場で圧倒的なシェアを誇るが、導入コストの高さや標準化された設計が、日本の中小・中堅企業には必ずしも適していないという課題を抱えている。ところが、クラウド化によって手の届く製品が増えてきたことで、検討を始める企業が増えている。
このような状況下で、マネーフォワードはクラウド会計やバックオフィスSaaSで蓄積したノウハウを活用し、日本企業のニーズに即した経営管理システムを提供している。中小企業向けの「Manageboard(マネージボード)」や、大企業向けの「Sactona(サクトナ)」は、そうした新たな市場に向けた製品だ。経営管理のデジタル化は、もはや大企業だけのものではなくなってきたわけだ。
マネーフォワードが目指すのは、企業規模を問わない経営管理ソリューションの提供だ。新設するマネーフォワードクラウド経営管理コンサルティングを中心に、アウトルックコンサルティングとナレッジラボの3社体制で市場に臨む。
競合環境を見渡すと、OracleやAnaplan、SAPなどの外資系製品が、特に大企業向け市場で優位に立っている。これらの製品は高機能であるものの、導入や運用コストが高く、柔軟性に欠けるという課題がある。これに対し、アウトルックコンサルティングの「Sactona」は、Excelベースのインターフェースを採用し、柔軟なカスタマイズを可能にしている。顧客企業の76%が上場企業(グループ会社含む)で、年商1000億円以上の大企業が全体の48%、従業員5000人以上の企業が30%を占める。
一方、2018年にグループ入りしたナレッジラボの「Manageboard」は中小・中堅企業向けに展開。売上高は2018年のグループジョイン時から8.1倍に成長し、ARRは2024年10月末時点で5.5億円に達している。
両社を束ねる新会社のマネーフォワードクラウド経営管理コンサルティングは、コンサルティングやシステムインテグレーションの機能を担う。経営管理システムは会計や人事と異なり、業界や業態ごとに管理手法や必要な機能が大きく異なるためだ。各企業の経営管理の実態に即したカスタマイズと、それを実現するためのコンサルティング機能が不可欠となる。
「中堅企業向けはSactona、SMB(中小企業)向けにはManageboardを展開することで、幅広い顧客ニーズに対応できる」と島内氏は話す。会計ソフトなどとの機能面での連携はまだこれからだが、両社の顧客に対するクロスセルは一定の成果が見込まれる。
今回の経営管理システム市場への本格参入により、マネーフォワードは業務効率化から経営管理支援へと事業領域を広げる。市場は拡大基調にあるものの、企業の経営管理システムの導入はこれからが本番だ。同社が掲げる「企業の成長支援」という目標の実現に向け、取り組みが注目される。
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