8段階の顧客育成プロセスを支えるため、三田製麺所では多彩なデジタル施策を展開している。具体的には現在、以下のようなチャネル戦略を実施している。
堀氏は、各チャネルには明確な役割があると話す。「例えば、SNSは認知獲得の入り口として機能し、そこから公式Webサイトやグルメサイトで詳細な情報提供を行う。来店後は、アプリやファンイベントを通じて関係性を構築していく。それぞれのメディアが顧客育成の特定フェーズを担当する形で設計しています」
また三田製麺所では、SNSやWebといったオンライン施策に加え、実際の接点を重視したオフライン施策にも力を入れ始めている。
「これまでに2回、三田製麺所のコアファンを集めたファンミーティングを実施しました。アプリ会員様やSNSを通じて告知したところ、想定の15倍もの応募があったんですよ」と堀氏は手応えを語る。
実際の店舗を使って開催されたファンミーティングでは、以下のような企画を実施した。
イベントでは参加者へのインタビューも実施し、コアファンになる顧客の解像度をあげるための取り組みも講じた。
三田製麺所がこれほどまでに顧客との関係構築に注力する背景には、将来を見据えた危機感がある。堀氏は「2050年には、東京以外の全ての都道府県で、人口が2020年比で減少に転じる見込み」と、厳しい状況を語る。
「私たちがやるべきことは、お客さま1人が年間、そして生涯を通じて三田製麺所のつけ麺を食べてくださる回数を増やすこと。顧客一人あたりのLTVの多寡が問われる時代が、近い将来訪れます」
「それを実現するためには、三田製麺所というブランドを、とにかく愛していただく必要があります。つまり、将来を見据えれば見据えるほど、ファンマーケティングは欠かせない施策なのです」(堀氏)
社内理解を得るためには、マーケティング・広報の活動効果を"自分たち以外"にも理解しやすい形で可視化することが重要だ。施策の必要性をロジカルに説明できる状態を整えることで、部門を超えた理解と協力を得られる。「広報・マーケティングの成果が理解されないと嘆くのではなく、理解してもらうために私たちが歩み寄る必要があります」と堀氏は強調する。
「例えばPV数が伸びた、SNSのフォロワーが増えたといった報告だけでは、業績が伴っていないと経営層から『何を言っているんだ』と思われて当然ですよね。大切なのは、これらの指標と業績がどうつながっているのか、その相関関係をしっかりと可視化することです。その点に気付ければ、『伝える』プロの広報・マーケティング担当の皆さんなら、きっとできるはずですよ」(堀氏)
エムピーキッチンホールディングスの取り組みは、広報・マーケティング部門が抱える「効果測定」という永遠の課題に対する、一つの解答を示している。それは、自分たちの価値を「他者にも分かりやすく伝える」という、広報・マーケティングの原点に立ち返ることにもなるだろう。
デジタル経営戦略やAI活用、業務効率化など、多岐にわたるビジネス課題を解決する「ITmedia デジタル戦略EXPO 2025冬」。ビジネスパーソンが“今”知りたいデジタル戦略の最前線を探求します。
【注目の基調講演】生成AIを社員約1.8万人が利用、平均3.3時間を削減――パーソルHDの“AI推進大作戦”、その舞台裏
なぜ今「タワレコ」が好調? 「銀テープ」「お守り」に隠された戦略
大量のデータでSuicaが超進化! 改札で「タッチ不要」が異次元のインパクトをもたらすワケ
「バズり」を逃さず「関係ない商品」も売る――オルビスの緻密な戦略がすごい
「データ重視」でWeb流入3倍に アステラス製薬のMRが挑んだCX改革
KDDIの「持続的なCX改善」、どう実現? FAQ刷新で年数万件の電話削減も
“勝ち手法”だった「インフルエンサーマーケ」 急激に失速した2つの要因
D2Cはオワコンなのか 多くのブランドが淘汰された背景に“闇深い”事情Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング