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高速PDCAで荷物返却も「爆速」 スカイマークの顧客満足度がANA、JALよりも高い納得の理由(2/3 ページ)

» 2025年02月07日 07時00分 公開
[鬼頭勇大ITmedia]

「いつまでもしあわせに」 現場スタッフのアートがSNSで話題

 もちろんスカイマークの顧客満足度が高い理由は、これだけではない。国土交通省のデータによると、2023年度の定時運航率は91.3%で、ANAとJALを上回り、国内航空会社として2位(※)。欠航率でも低い水準を維持している。

※:客席数が100または最大離陸重量が5万kgを超える航空機を使用して行う航空運送事業を経営する事業者を対象にした調査内で2位。

 その他、戸田氏はスカイマークの強みを「現場力」と表現し、顧客満足に関するさまざまな取り組みを挙げる。搭乗客と直接コミュニケーションする客室乗務員であれば「セカンドドリンク」のサービスや、子どもにお菓子や塗り絵などをプレゼントするサービスが代表例だ。

 同社では客室乗務員だけでなく、飛行機の整備クルーや誘導員たちも、顧客体験の一翼を担っている認識を持てているといい、駐機場に係員が水で絵を描く「水アート」もスカイマークらしい取り組みだ。

 中でも、バラの絵に「乗ってくれてありがとう いつまでもしあわせに」というメッセージを添えて搭乗客のプロポーズを祝福した水アートは、数年前にSNSで大きな話題となった。井上弥緑氏(CS推進室 副室長)は次のように振り返る。

 「きっかけとなったのは、お客さまが花束を受託手荷物としてお預けされたことでした。積み込みを担当する係員が貨物室へと運ぶ際に『これは何だろう』と気になって、荷物をお預かりする係員に聞いたところ、プロポーズで使われたものだという情報が共有され、何かできないかと考えて水アートでお祝いしました。このように、業務の垣根を超えて情報を共有しながら、お客さまのために何ができるかを考えられるのが、われわれの強みです」

プロポーズをした乗客に、水アートでお祝いのメッセージを表現したことも話題に(提供:スカイマーク)

アンケートは毎日チェック、課題があればその日につぶす「高速PDCA」

 スカイマークでは、顧客満足度に関しては大まかな運用を定めつつも、細かな運用は現場の裁量にゆだねており、それぞれが工夫して業務改善に取り組んでいる。

 現場力が発揮されている例として、戸田氏は新千歳空港を挙げる。同空港は受託手荷物のスピードに対して、顧客の評価が非常に高い。

 大まかな荷物の積み下ろしの運用はどこの空港でも共通しているが、新千歳空港では飛行機から降りた人が受け取りスペースまで、どのくらいの時間で到着するかを計測。これまでの実績で、利用客が来る前に荷物を流せることは分かっていたが「お客さまが来る前からレーンに荷物が流れていると、自分の荷物を探す時間などでかえって手間取ってしまう」(戸田氏)と判断。利用客が来るタイミングで係員が合図を出し、荷物を流し始める運用をしているという。

 このような、現場が自ら考えて行動する文化を下支えしているのが「顧客の声」の可視化・データ化による「高速PDCA」だ。

 スカイマークでは、搭乗客に全6項目の「搭乗後アンケート」を送付している。アンケート結果はCS室で集計し、毎日の朝会で分析。緊急度の高い課題が見つかれば、即日中に施策を講じる。1日に700件、年間で25万件ほどの回答があるという。

搭乗後アンケートの設問内容(提供:スカイマーク)

 集めたアンケートは、内製したシステムを活用して毎日24時までにデータを集計。Excel上で集計し、レポートにまとめている。さらにフリーコメントは、翌日朝に(1)サービスを褒めるものなのか、(2)苦言を呈するものなのか、(3)提案などの意見なのかを大別し、その上で「機内」に関するものか「空港」に関するものか――といった形で細分化して整理する。

 レポートとフリーコメントは、経営陣や支店長も参加し、毎日行う朝会で発表している。レポートには全支店のデイリーや月間、年度の平均スコアがまとまっており、評価の高い順に記載しているという。また、それぞれのデータは全社員が見られるようにしており、こうした環境が現場力の高さにつながっていそうだ。

高速PDCAサイクル(提供:スカイマーク)

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