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Google元副社長、村上憲郎氏に聞く「AI時代の人材育成術」人生最後の貢献(1/2 ページ)

» 2025年02月21日 08時00分 公開

 東京国際工科専門職大学(International Professional University of Technology in Tokyo 以下、IPUT)は2024年11月30日、GDG Tokyoと連携してグーグルの最新技術を1日で学べるコミュニティーイベント「GDG DevFest Tokyo 2024」を開催した。GDGとは世界有数のデベロッパーコミュニティーだ。世界140カ国・地域以上に1000以上のGDG が存在している。

 イベントではグーグル関係者による講演やIPUTで学ぶ学生たちの実験などさまざまな成果を発表した。基調講演を務めたのはIPUTの村上憲郎学長だ。同氏はグーグル米国本社副社長兼グーグル日本法人の社長などを長年務めたほか、AIについての見識が深い。村上学長に、IPUTでのAI時代の人材育成術や、グーグルの発展の歴史について話を聞いた。

村上 憲郎(むらかみ・のりお)1947年生まれ。京都大学工学部卒業。専門は人工知能。元Google米国本社副社長兼Google日本法人代表取締役社長。教育にも注力する傍ら、現在、総務省AIネットワーク社会推進会議委員。2024年4月より東京国際工科専門職大学学長。大分県出身

アカデミアと専門知識を融合 AI時代の人材育成術とは?

 村上学長は、京都大学工学部卒業後、日立電子にミニコンピュータのエンジニアとして入社した。電子の世界に入った理由は、学生運動に力を入れていた学生当時、映画『2001年宇宙の旅』を見て「こんな世界があるのか」と興味を持ったからだ。その後1978年、当時のコンピュータメーカーの世界的企業、米DECの日本法人に入社。通商産業省(現経済産業省)が1982年に開始した、AIマシンを開発する「第五世代コンピュータプロジェクト」の担当になり、AIの知見を深めることになった。

 その後、いくつかの外資系企業の日本法人トップを経て、2003年にグーグル米国本社副社長兼グーグル日本法人の社長に就任。2009年〜2011年は名誉会長を務めるなど日本でのグーグルの黎明期において同社の発展に寄与した。

GDG DevFest Tokyo 2024に登壇した村上学長

 名誉会長退任後、いくつかの会社経営に携わりつつ、大学で教べんをとるようになる。「数年前から大阪公立大学の大学院のAIコースの教授をやっていました。最近、日本経済の元気がない中、これからは若い学生に期待するしかないという思いがあり、自分の余生を、教育を通じて貢献したいと考えました。そのタイミングでIPUTから声をかけてもらったのです」

 村上学長も「専門職大学」のことを、あまり知らなかったという。「話を聞くと、アカデミアと専門職を融合させたいとのことで、引き受ける決意をしました」

 一部ではインターネットが発達し、いろいろな情報が得られるから、もう大学に行かなくてもいいという論調もある。現在の大学教育には、どんな問題意識を持っているのか。「近年のテクノロジーの進化はものすごいです。どうやってついていくのかというと、アカデミアの基本的な素養がないと変化に追随していけないのです。アカデミアと専門知識の2つが相まって社会に役立ち、技術が進ちょくしてもキャッチアップが可能になるのです」

GDG DevFest Tokyo 2024の様子

現存するソフトで課題解決する人を養成

 では、世界で通用する人材をどのように育成するのか? 村上学長は「生成AIの時代には、3種類の人材がいる」と話す。

 「1つは自らツールを開発する人。2つ目は、誰かが開発したツールを使い、所属する組織、会社などが抱える課題を解決する人です。3つ目は、生成AIはどういうものかを心得ている人です。IPUTは2つ目の人材育成を狙っています」

 日本では理系を選択する学生がそもそも少ない上に、少子化という要因が重なり、エンジニアの人材不足はより加速しそうにも見える。「数年前から文科省がやっているGIGAスクール構想の成果がそろそろ出てくるでしょう。小中、ところによっては高校まで端末を配るわけですから、自分は文系だからコンピューターはちょっと……という人は減っていくのではないでしょうか。文系、理系の区分すらなくなるのかもしれません」

 GIGAスクール構想の教育を受けた生徒を、IPUTに受け入れ「さらに磨きをかけて世の中に送り出し、現場で即戦力になる人を養成していきたい」と意気込む。

 大学生によるインターンについてもユニークな方式を採用している。「日本の大学のインターン期間は、ほんの数カ月間だけです。われわれIPUTでは年度ごとに数カ月間インターンを経験させます。学生は、自分のスキルを踏まえて何が実社会に出たら必要なのかを知れます。翌年度はそれに基づき、違う会社でインターンをするのです。その流れの中で、縁のある企業に雇ってもらうことにもつながっています」

International Professional University of Technology in Tokyoのインターン制度

 インターン制度を、就職にもうまく活用できているようだ。1月31日には、ドイツ、スイス、シンガポールなどの世界トップレベルの教育機関と、企業インターンシップに関する国際アライアンスも発足した。

 日本はインターネットの世界で、GAFAのような世界的なプラットフォーマーを生み出せなかった。しかしNVIDIAのジェンスン・ファンCEOは2024年11月の来日時、生成AIと製造業を巧みに組み合わせることによって、日本が新しい産業革命を起こせる可能性、すなわちGAFAの次の企業を生む土壌があることを語っている(関連記事を参照)。

 「学生には、卒業してすぐに起業することはおすすめしていません。まずは就職をして知識と経験を積み上げ、自分のやりたいことが明確になり、自分の思ったことを会社がやらせてくれないとなったら起業してもいいでしょう」

NVIDIAのジェンスン・ファンCEOは来日時、生成AIと製造業を巧みに組み合わせることによって、日本が新しい産業革命を起こせる可能性に言及した(2024年11月河嶌太郎撮影)
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