頑張っているのに成果が出ない……「イシュー思考」で仕事の生産性を高める方法(2/2 ページ)

» 2025年03月10日 13時30分 公開
[和氣忠ITmedia]
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イシューをより小さい課題に分解して体系化する

 このように、その問題における「イシュー」(解くべき課題)を特定することが、イシュー思考の第一歩です。イシューを的確に特定できれば、無駄なことに時間や労力、資金などの資源を投入することを防げます。これが、イシュー思考が生産性をアップする理由の一つです。

 イシューが特定できたら、次はそのイシューを解く作業です。

 前述した例の(3)で「工夫をすれば」解けると書いたように、問題の本質であるイシューを解くことは、多くの場合、簡単ではありません。そこで編み出されたのが、イシューをより小さい課題に分解して体系化していく手法(=イシューアナリシス)です。

 これによって、イシューを解くためのあらゆる可能性を追究しつつ、同時に、無駄に風呂敷を広げてしまって非効率になるのを避けることができます。

 具体的には、イシューという一つの課題を解くために必要な複数の下層課題(=サブイシュー)を書き出すという作業をします。その際、イシューを解くために必要な課題が過不足なく書き出されている、すなわち、必要な課題は漏れなく書かれていると同時に、無駄な課題は書かれていないことが重要です。

 つまり、関係のありそうな課題を機械的に羅列するのでなく、十分に吟味しながら書くという作業が必要になります。

(『イシュー思考』P.9より引用、提供:かんき出版)

なぜ「イシュー思考」で生産性がアップするのか 2つの理由

 イシューをサブイシューに分解できたら、同じやり方で、各サブイシューを解くために必要な最もシンプルな課題(サブサブイシュー)にまで展開します。すると、全体がイシューを頂点とする論理的なツリー構造に体系化されます。

 完成した「イシューの体系図」は、問題解決の設計図として使っていきます。末端のサブサブイシューを全て解ければ自動的にサブイシューを解けます。全てのサブイシューが解決すれば、大元のイシューが解ける仕組みになっています。

 つまり、イシューの体系図は、問題解決全体の論理構成が見渡せると同時に、問題を解くために必要な全ての作業項目が網羅されたマップとなっているので、これに従って問題解決を進めていけば、無駄なく効率的に目的を達成することができます。

 さらに、可視化されたイシューの体系図は、チームメンバー間で共有することも容易です。課題の検討や作業を進めていく中で、どこか一カ所の仮説が検証されたとき、関連してどこを見直す必要があるのかが一目で分かるため、アップデートしていくことも容易にできて、個人の生産性だけでなく、チームの協働作業の効率を飛躍的に高めます。

 これが、イシュー思考が生産性をアップするもう一つの理由です。

(『イシュー思考』P.11より引用、提供:提供:かんき出版)

イシュー思考を加速する「仮説思考」

 まとめると、イシュー思考は以下の二つのフェーズで構成されています。

  • 問題解決に向けて本質的な課題を見極める「イシューの特定」
  • 特定されたイシューを実際に解いていくために分解して体系化する「イシューアナリシス」

 どちらのフェーズにおいても、無駄な作業を避け、本当に必要な課題のみに取り組めることが最大のメリットです。従って、イシュー思考ができるようになると、知的生産性は何倍にもなります。

 イシュー思考の生産性をさらに上げるよう寄与しているのが、「仮説思考」です。

 イシュー思考の重要な特徴として、イシューの特定、イシューアナリシスのどちらのフェーズにおいても、仮説思考をツールとして駆使するという点があります。何をイシューとしたらよいか、あるいはどのようなサブイシューを置いたらよいか、一発で“正解”を見つけるのは容易ではありませんが、思い悩んでいては生産性が上がりません。

 そこで思考停止にならないで済む方法が、仮説思考です。

 仮説思考とは、その名の通り、まずは間違っていてもよいから仮説を立てて、それをたたき台として思考活動を前進させる思考法です。頭の中で逡巡(しゅんじゅん)しているのではなく、とりあえず言葉にしてみて、それを修正しながら正解に近づいていくのです。

 この仮説思考をフルに活用してイシュー思考を進めることによって、仕事における知的生産性が極限まで高められるのです。

 課題解決に悩んでいるのであれば、ぜひイシュー思考を学び、取り入れてみることをお勧めします。

筆者プロフィール:和氣忠(わきただし)

日本道路公団のエンジニアとして高速道路計画・建設に従事したのち、マッキンゼー・アンド・カンパニーにてテクノロジー・製造業分野を担当してパートナー就任、グローバルマネジャートレーナーのメンバー兼東アジア地域マネジャートレーニングリーダーとなる。

その後、カーライルグループのアドバイザーとして投資先をサポートし、デジタル化の動きが本格化していくタイミングにてアクセンチュア戦略コンサルティングのマネジングディレクター就任。2017年に働くヒトの可能性を開花させることをミッションに、株式会社キャリアデベロップメント・アンド・クリエイションを起業。著書に『なるほどイシューからの使えるロジカルシンキング』(かんき出版)がある。

東京大学工学部土木工学科卒業、同大学院修了、スタンフォード大学MBA修了。


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