この記事は、『イシュー思考』(和氣忠著、かんき出版)に掲載された内容に、かんき出版による加筆と、ITmedia ビジネスオンラインによる編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。
「イシュー思考」という概念はビジネス界ではかなり広まってきているが、実際どのような思考法で、どのように使うことができるのだろうか。マッキンゼーやアクセンチュアのコンサルティングを経て独立起業し、『イシュー思考』を執筆した和氣忠氏が、イシュー思考とはなにか、どのように役立つかについて解説する。
あなたは日頃、「仕事が思うように進まない」と感じるとき、どんなことで困っているでしょうか。
「解決すべき問題が目の前にあっても、どこからどう手をつけたらよいか見当がつかない」「頑張っているのに成果が出ない、無駄な作業を繰り返している気がする」「チームのメンバーがバラバラに作業を進めていて、成果をまとめるのが難しい」「議論をしても話がまったく嚙み合わず、いつまでも意思決定されない」「そもそも何のためにやっているのか、何を目指しているのかも曖昧」──。
イシュー思考ができれば、このような困りごとを回避することができます。
常に今何を目指しているかが明確に共有される状態になって、必要な作業を漏らすことが減るでしょう。同時に無駄な作業もなく、社内・社外との議論やコミュケーションが進めやすくなって、意思決定も速やかになります。すなわち、生産性を非常に高め、ストレスも大幅に減らすことができるのです。
しかし、「イシュー思考」と聞くと、すごく難しそうと感じてしまう方が少なくないかもしれません。
ですが、自転車に乗れるようになるのと同じだと考えてください。最初はなかなか自立できませんが、ちょっとしたコツをつかんだ瞬間からスイスイと乗れるようになります。慣れてしまうと、どのようにすると自転車に乗れるのか、などは全く忘れてしまって、無意識のうちにラクに自転車に乗っていますね。イシュー思考も同じです。
イシュー思考は、何か問題を解決しようとする際に使う思考法の一つで、「イシュー」という概念を用いることが特徴です。
では、イシューとは何でしょうか。
ある大きな問題に直面した時、これをやれば問題が解決するだろうと思われる課題を設定して取り組んでいきますが、この課題の設定にはいくつかの切り口=アプローチが考えられます。そして、課題設定の切り口次第で、問題が解決するかどうかが左右されます。
裏返せば、課題設定の切り口を誤ると、どんなに頑張っても問題は解決しません。
「問題の本質を捉え、その課題を解けば確実に問題を解決することができる」課題のことを「イシュー」と呼びます。
分かりやすい例を挙げてみましょう。
「今の収入では、生活が立ちゆかない」という問題を解決したいというケースで考えてみます。
(1)どうすれば宝くじで1等を当てられるか考える
(2)どのカードローンでお金を借りるか考える
(3)いかにして収入を増やすか考える
上記3つのうち、どの課題に取り組むべきかは一目瞭然ですね。(1)は、当せんすれば問題は解決するかもしれませんが、当せんする確率はほぼゼロです。(2)は、お金を借りること自体は簡単にできますが、借金を抱えてしまうので、問題の本質的な解決にはなりません。(3)は、工夫は必要ですが不可能なことではなく、成功すれば問題を根本から解決できます。
従って、(3)こそが取り組むべき課題=イシューであって、(1)や(2)はどんなに頑張っても時間と労力の無駄と言えます。
イシューかどうかの見分け方は大変シンプルで、不可能ではなく工夫すれば解くことができて、かつ、解いた結果が必ず問題の本質的な解決につながることです。縮めると、イシューの要件は「解き得る」「解いた結果のインパクトが大きい課題」──となります。
前述の(1)や(2)のように、そもそも解くことが不可能な課題や、解いたところで本質的な問題解決につながらない課題は、イシューではありません。
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