管理職に昇進したのに「給料がほとんど変わらない」「平社員の時より手取り額が減った」との話をよく聞きます。
仕事量と責任は増え、残業もしているにもかかわらず上記の現象が起きているのはどうしてでしょうか。この記事では事例を基に「昇進後の給料手取り額がなぜ増えないのか」「会社でいう管理職と法律上の管理職の解釈の違い」「管理職の残業代に関する企業リスクと対処策」について解説します。
Aさん(28歳)は大学を卒業後、機材の製造・卸売業を営む甲社で営業を担当しています。毎月トップクラスの成績を上げ、メンバーとのコミュニケーションも良好。人事により今年1月1日付で主任に昇進し、後輩8人のまとめ役を担うことになりました。
ところが、主任は自分の担当取引先に加え、部下たちへのフォローも必要でその分働く時間が増えました。一般社員の時は月20時間の残業で済んでいましたが、1月の残業時間は月40時間。それでも仕事が片付かないので月2日、本来は公休日であるはずの土曜日に出勤しました。2月以降もこのペースは続きそうです。
2月25日に1月分の給料が支給され、Aさんが給料明細書を確認したところ、平日や土曜出勤分の残業代がついていませんでした。驚いたAさんは、上司であるB営業課長に尋ねました。
Aさん: 1月分の給料ですが、平日に残業した40時間分と土曜日に出勤した5時間分の残業代が計算されていません。経理が見落としちゃったんですかね?
B課長: あれ、知らなかったの? 主任は管理職だから残業代は出ないよ。そのかわり給料には月2万円の主任手当をつけているし、基本給だって上がったはずだけど。
Aさん: 確かに基本給は5000円上がりました。しかし主任手当と合わせても2万5000円では残業代の方が多いはず。つまり差額はタダ働きってことですか?
B課長: 私だって会議の出席とかで残業することがあるけど、残業代はもらっていないよ。
Aさん: しかし……。
B課長: これは会社で決まっていることだから、私に言われても困る。君は優秀だから将来もっと出世するはず。今は余計な事考えないで仕事に励んでくれ。
自席に戻ったAさんは、B課長の言葉に納得できませんでした。
Aさん: 一般社員の時には給料にきちんと5万円前後の残業代がついていた。その時の方が給料多いなんておかしい。出世なんかしなくていい。もう仕事やる気なくしたわ。
企業が対象社員に役職手当や管理職手当を支給する目的は、次の2点です。なお、(1)(2)の意味合いは会社の解釈によって変わります。
役職に伴う責任や業務の負担を考慮して決定します。「主任」「課長」「部長」と上級管理職になるごとに役職手当の額も増えることが多く、基本給に上乗せして定額支給します。
役職に就いている社員は、通常の労働時間を超えて働くことが多く、そのための残業代をあらかじめ固定的に支払う意味合いで役職手当の額を設定することがあります。その場合、雇用契約において役職手当の中に時給換算×相当時間分の固定残業代を含んでいることを明確に示すことが必要です。
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