株式会社ベルシステム24 デジタルCX本部 DCXセールス部 部長
さまざまな分野でデジタル化が進み、顧客との接点が多様化する昨今において、顧客体験価値(CX)の向上は、企業にとって重要な経営課題の一つだ。特にコンタクトセンターは、企業と顧客との関係をつなぐ役割として重要性を増している。
多くの企業では、コンタクトセンターを通じてCXを向上させるため、電話・メール・チャット・SNSなどのチャネルを改善すべく試行錯誤しているが、なかなかCXの向上につながらないケースも多い。さらに、昨今の少子高齢化の影響によって人材が不足する中で、コンタクトセンターでは同時に業務の効率化も迫られている。
こうした苦境の中で、企業はどのようにCXの向上につなげていけばよいのか。その鍵となるのが、コンタクトリーズン分析だ。
ベルシステム24(東京都港区)でコンタクトセンターDX推進に携わる筆者が、これまでの知見をもとに、CXを向上させるポイントを解説していきたい。
コンタクトセンターには、顧客とつながる接点が電話・メール・チャット・SNS・WebサイトのFAQページ・お問い合わせフォームなどさまざまある。それらの接点で、顧客が問い合わせや問題解決を求めた際、そこでどのような体験をするかがCXであり、それはブランドや企業に対してポジティブにもネガティブにも影響するものだ。
的確な回答で、スピーディーに問題を解決できれば、顧客の満足度は高くなり、企業への信頼は向上する。一方で、対応が遅れ、問題も解決できなければ、顧客は不満を感じ、企業への不信感につながってしまう。
コンタクトセンターに求められるCXの最重要課題は、顧客が問い合わせたいと思ったその時、すぐに自己解決できる仕組みを提供することだ。
スマートフォン登場以降、顧客は何か問い合わせたいことが発生すると、まずWebサイトやSNSで調べて、それでも解決しない場合に企業に問い合わせるという行動が一般的になった。もし顧客が何らかの手段で自己解決できれば、コンタクトセンターへの問い合わせが減り、CXは究極的に高い状態になるはずである。
しかし実際には、そうはなっていない。多くの企業が「顧客がなぜ問い合わせをしてきたのか?」という真因を把握できておらず、自己解決できる仕組みを提供できていないからだ。まずは、この真因である「コンタクトリーズン」を分析することによって、顧客を理解し、最適な自己解決の方法を探し、提供していくことがCX向上の近道である。
当社で提供しているコンタクトリーズン分析サービスの場合、具体的なコンタクトリーズン分析を開始する前に、専門コンサルタントが企業にヒアリングを行い、簡易的なアセスメントを実施する。分析にはそれなりに時間とコストがかかるため、まず目的の確認や全体感からコンタクトリーズン分析を行うことが必要かどうかを検討したうえで着手することが望ましい。
コンタクトリーズン分析は、大きく「コールリーズン分析」と「サイトアクセス分析」がある。
まずコールリーズン分析では、テキスト化されたテキストマイニングツールを活用して顧客との会話を分析し、話題や問い合わせの真因、傾向を把握する。
顧客の問い合わせは単純な一問一答のFAQで解決できるものもあるが、実際には顧客自身が、何が分かっていないのかを把握できていなかったり、複数の事象や問い合わせ内容が同時に発生していたりと、意外と複雑な場合も多い。そのような中から、顧客のつまずきや問い合わせの真因を明らかにしていく。
サイトアクセス分析は、顧客がWebサイト上のどこを見て、どのように行動して問い合わせしてくるのか、あるいはどこでつまずいたのかを把握するために行う。コールリーズンと重ね合わせると、顧客がどこでどうつまずき、問い合わせに至ったのか。その解像度を高めることができる。
例えば、WebサイトのFAQのアクセス上位と、コールセンターに入ってくる問い合わせの上位が異なるケースが多く見られる。また実際に見てもらいたいQAが見つけづらい場所にあったり、見ても説明が分かりづらく解決につながらなかったりするケースも多い。「どうしてわざわざ電話をするのだろう?」と深く調べていくと、昔作ったQAに「電話してください」と書かれていたこともあるほどだ。
このようなプロセスを経て顧客のつまずきや問い合わせの真因をつかめたら、それらはどのような手段で解決できるのか、どの問い合わせチャネルで解決することが顧客体験上最も良いかを検討。コールリーズンの大まかなカテゴリーごとに適した問い合わせチャネルを設定していくことが良いだろう。
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