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東芝のDXブランド「TOSHIBA SPINEX for Energy」 キーマンに聞く圧倒的な強み変革の旗手たち〜DXが描く未来像〜(2/2 ページ)

» 2025年04月10日 09時07分 公開
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TOSHIBA SPINEX for Energyの活用事例

 TOSHIBA SPINEX for Energyの大きな活用方法の一つが、データ収集能力だ。発電所や工場の制御システムからデータを収集する仕組みを備え、さらに追加のセンシングデバイスや省電力無線IoT技術を活用することで、河川やダムなど電波が届きにくい場所でもデータ取得を可能とした。

 これらのデータはクラウド上で一元管理され、セキュリティにも配慮した形で提供している。このような柔軟なデータ収集基盤は、再生可能エネルギー施設や大規模工場など多様な現場環境に対応でき、コスト効率も高い。

 次に注目すべきはアセット管理機能だ。エネルギー業界では設備の長寿命化と故障予知が重要課題となっていて、TOSHIBA SPINEX for Energyはこれらのニーズに応えるソフトウェアを提供している。例えば「EtaPRO」(エタプロ)は、性能評価ソフトを活用し、熱効率向上や燃料費削減を実現できる仕組みだ。また、蒸気タービンの羽根劣化予測技術などの診断機能も備えていて、設備の運用効率向上に寄与している。これらの技術は、設備トラブルの防止や運用コスト削減につながるものだ。

 太陽光発電所(PV)向けの統合監視サービスも提供している。このサービスでは複数拠点のPV地点を一括管理できるダッシュボードを提供しており、日射量や環境要因を考慮した性能評価が可能だ。これにより本来発電すべき量と、実際の発電量との差異を明確化し、効率的な運用改善が図れるという。

 AIを活用した予測と最適化機能にも力を入れている。例えば水力発電所では、ダム流入量予測や連接水系発電所の最適運用計画を立案可能で、気象データと連携することで発電量最大化を目指す計算モデルを構築した。

 3月にはエネルギー関連設備の運用計画の策定や導入効果の算出などに活用されている最適化計算ツールにおいて、顧客自らが計算モデルを作成できる機能や、業界で広く導入されている現場帳票システム「i-Reporter」とのデータ連携機能、現場の安全パトロール業務を効率化する機能、社内外の関係者と情報共有できるWebチャット機能を追加するなど、機能拡充を進めている。

ラインアップ

人材面におけるDX 人手不足の解決を主眼に

 こうしたエネルギー分野におけるDXの狙いは、少子高齢化により今後、日本が抱える人手不足の課題解決を主眼に置いている。人材に対する支援で中心的なサービスが、点検業務のデジタル化だ。従来、人手に頼っていた設備点検作業を効率化するため、「巡視点検サービス」を提供している。

 このサービスでは、スマートフォンやタブレットを活用し、点検チェックリストやスケジュール管理機能を提供している。工場などの現場では、こうした作業を依然として紙を使用して実施いるところが多い。同業他社も課題としているのだ。特に屋外の現場では、点検シートが水に濡れたり、風に飛ばされたりなどの現実的な問題もあった。

 さらにAIによる画像分析機能を搭載しており、撮影した点検画像から異常箇所を自動的に検出できる。これにより、熟練者の経験に依存していた異常検知作業が効率化できるとともに、人材不足への対応策としても期待が集まっている。

 省力化の一環として、ドローン技術も活用している。ドローンにカメラや温度センサーを搭載。広範囲の設備点検を自動化した。これにより、人手による巡視頻度を減少させつつ、高精度なデータ収集と分析をできる。このような取り組みはすでに実証段階に入り、実用化への道筋が見えているという。

生成AI活用も視野に

生成AI活用 何を変えられるか

 TOSHIBA SPINEX for Energyでは、生成AIの活用も進めている。武田技師長は、「生成AI活用はトラブル対応の効率化において顕著な効果をあげる」と期待する。

 従来、設備にトラブルが発生した際、顧客が東芝に連絡し、その後エンジニアが設計データや過去の事例をもとに原因を特定し、対策を提案する流れが一般的だった。しかし、この工程には多くの時間がかかっていたのだ。これに対し、生成AIを導入することで、原因究明から対策提示までの時間を、劇的に短縮できる可能性があるという。

 例えば、蒸気タービンの第一軸受けでメタル温度が制限値を超えた場合、「どのような対策を取ればよいか」という質問に対し、生成AIが、東芝が蓄積してきた膨大な設計データやトラブル対応ノウハウをRAG(検索拡張生成)で参照し、迅速かつ的確な回答を提示する。このシステムは顧客自身が直接利用でき、東芝のエンジニアが活用することでもさらなる効率化が期待できる。

 「トラブル対応の際、最も時間がかかるプロセスが資料探しだった」と武田技師長は振り返る。この工程が生成AIを活用することによって、原因究明までの時間が大幅に短縮できるのだ。

 ただ、現段階ではこうした資料が紙媒体でしかないものも少なくなく、生成AIが参照できるデータにすべく、目下デジタル化を進めているという。武田技師長によれば、この生成AIは実証段階にあり、具体的な効果についてはまだ数値化できていないものの、「期待感としては非常に大きい」と話す。

 こうしたTOSHIBA SPINEX for Energyによるさまざまな省力化は、これからの日本社会を考えると欠かせないものだという。

 「日本には多くの工場や発電所があり、各自の老朽化も課題です。さらに、これを支える人材も、少子高齢化により人口減社会の到来によって、確実に少なくなっていきます。そしてこうしたインフラを支える人材の多くは、高齢のベテランエンジニアです。こうした職人の方々の知見をどう未来に受け継いでいくかが最大の課題です」(武田技師長)

 人手不足とノウハウの継承問題という、今まさに日本が直面している課題に向き合っている点が、TOSHIBA SPINEX for Energyの特徴だ。切実さという点では他のDXブランドと一線を画しているようにも思える。デジタルや生成AIの活用によって、いかにして課題解決していけるか注目だ。

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