「国産VS.アジアン」選ぶ理由が変わった タイヤ市場の二極化とメーカーの打ち手高根英幸 「クルマのミライ」(5/5 ページ)

» 2025年07月18日 08時00分 公開
[高根英幸ITmedia]
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「安かろう悪かろう」は過去の話

 最近は、ホイールにはお金をかけてもタイヤはアジアンを選ぶ、というクルマ好きも珍しくない。タイヤは消耗品だから、お金をかけるのがもったいないという考えから、そういう選択をするケースもあるようだ。

 確かに、どうせすり減ってしまうのだから安いモノを選びたいというユーザー心理も分からなくはないが、冒頭で触れた言葉を思い出してほしい。「タイヤがクルマを支えている唯一の部品」なのだ。路面と接触しているタイヤがクルマの性能を決め、安全性を確保していることを忘れてはならない。

 クルマの性能が高まった結果、タイヤ性能の差を感じにくいユーザーもいるようだ。そのため、どれを履いても違いが分からないため、安いタイヤへと流れている。

 しかし、価格を重視して選んだ結果、もし走行中にバーストしてホイールまで使えなくなってしまったら、高い買い物になってしまう。また、安いタイヤはウエット性能も低くなりがちだ。ウエット走行で急ブレーキをかけ、制動距離が長いために衝突事故を避けられなかった、というケースもあり得る。

 アジアンタイヤでも価格差があり、性能もさまざまであるようだ。筆者所有の1台にはアジアンタイヤが装着されているが、日常的な使い方ではそれほど不満は感じない。一般道を普通に走るだけなら、これで十分と判断するユーザーがいるのもうなずける。

 価格を優先する向きにブリヂストンが提案しているのが、スタンダードタイヤであるNEWNOだ。これは同社の最新タイヤ設計技術を用いて開発され、主にアジア圏で生産することで低価格を実現している。

NEWNOの最大の特長はウエット性能の高さ。耐摩耗性も従来商品より14%も向上している。価格も国産タイヤとは思えない安さなので、急速にユーザーを獲得している(出典:ブリヂストン)

 アジアンタイヤのほうが価格は安いものの、品質による安心感を加味してNEWNOを選ぶというユーザーも増えている。これから低価格帯のタイヤ販売も競争が激化しそうな様相だ。

 国産タイヤメーカーは差別化を図り、アジアンタイヤとのすみ分けが進んでいる。安さを取るか安心を取るかでユーザーの傾向は二極化しているようだ。

 ユーザーが情報発信する機会が増えた昨今は、口コミが広がりやすい環境にある。価格と性能のバランスが取れた製品が、今後さらに市場で選ばれるはずだ。

筆者プロフィール:高根英幸

 芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmedia ビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。著書に「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。近著は「きちんと知りたい! 電気自動車用パワーユニットの必須知識」(日刊工業新聞社刊)、「ロードバイクの素材と構造の進化」(グランプリ出版刊)。


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