日本国内の法規では、かつてヘッドライトの明るさには上限があった。厳密には現在も存在するのだが、ロービームはすれ違い用前照灯のため上限がなく、事実上撤廃されているに等しい。
それはおそらく輸入車の影響だろう。クルマの保安基準や車検制度は、かなり厳格なものである一方、常に世界中で見直しが繰り返されている。例えば、新技術が搭載された車両が従来の保安基準から逸脱するものであっても、それが自動車メーカーの品質を満たし、交通安全のために意義のある装備であれば、例外的に認める国もある。そうなると国際基準として統一化を進めているため、認可しないわけにはいかなくなるのだ。
世界で最初に実用化されたLEDヘッドランプは、小糸製作所が開発し、レクサスLSに搭載されたものだが、ドイツ勢も負けてはいない。
ヘッドランプが明るくなっていくと、別の問題が生じてくる。明るすぎるヘッドライトは周囲のドライバーにとって迷惑になってきたのだ。
ヘッドライトは自車の視界を確保すると同時に、周囲に自車の存在をアピールするためのものであるが、明るすぎると周囲のドライバーを幻惑しかねない。
ヘッドライトの光軸は、まぶしさを抑えるためにもきちんと定められており、ロービームは1%下向きの角度に限られている。ロービームの光軸を作り出すため、上向きの光は遮蔽(しゃへい)されているのだ。これがカットラインと呼ばれるくっきりとした光軸を作り出しているのだが、クルマは走行中、前後左右に揺れているし、道路もずっと平たんではない。
道路の凸凹やドライバーの運転操作によってもクルマの姿勢は変化する。そのため、少しでも前上がりの姿勢となれば、カットラインが上がってしまい、対向車や前走車のドライバーの目を強烈な光が直撃してしまうのだ。
しかも、LEDランプの光はエネルギーが強く、眼球内で反射するため、まぶしさは倍増する。特に先進国ではドライバーの高齢化が進み、加齢によってまぶしさを感じやすくなっていることも原因らしい。
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