ツヤのあるストレートヘアの需要増は、美容室市場でも同様だ。リクルートの調査研究機関「ホットペッパービューティーアカデミー」による「美容室・理容室の利用に関する実態調査」によれば、女性の1年以内のメニュー利用率がカットやカラーはマイナスになるなか、「縮毛矯正・ストレート」のスコアが3年連続で増加した。
また、ホットペッパービューティのフリーワード検索ランキング(女性、2025年6月)では、20〜50代までの幅広い年代で「髪質改善」が1位に。「縮毛矯正」と「酸性ストレート」も高い順位となった。
酸性ストレート専門サロン「sins」を運営するsinsコスメティクス社(東京都中央区)の日野達也社長は、「酸性ストレートの需要は年々高まっている」と話す。
「当社では、銀座の店舗運営のほか、自社開発した酸性ストレート薬剤のB2B販売やヘアケア商品の販売もしています。創業5期目(2024年8月〜25年7月)の売り上げは、美容室事業が前年比1.2倍の2.1億円、ヘアケア商品・業務用薬剤事業は2.6倍の1.2億円でした。
美容室では、従来の顧客層である40〜60代に加え、ライトな髪の悩みを持つ20〜30代の来客が増加しました。B2B販売では、これまで個人店が中心でしたが、大手法人の導入が増えたことで売上増となりました」(日野社長)
従来、縮毛矯正はアルカリ性の薬剤が中心だったが、ブリーチで傷んだ髪やエイジングが進んだ髪などは施術対象外になりやすい。また、刺激により逆に髪質が悪化するなど失敗事例が少なくない。そのため、髪への刺激を抑えて幅広い髪質に対応する「酸性ストレート」への関心が高まり、より安全かつ効果的に髪質を整えたい若年層の来店が増えている。
「酸性ストレートは事業者側のメリットも多く、客単価の上昇は、美容師の給与改善にもつながります。近年、美容室市場は採用に苦戦しており、美容師の離職防止策として各社が給与を引き上げています。そうした背景もあり、当社の薬剤を採用している美容室の酸性ストレートの平均単価は2万5000円と高く、従来のアルカリ性の縮毛矯正と比べて約2倍の価格で提供している企業もあります」(日野社長)
sinsでは、3万〜3万8000円(スタイリストによって変動)で酸性ストレートを提供しているが、10月から日野社長の施術を5万円に改定予定だ。
酸性ストレートは扱いが難しいという課題があるが、sinsでは教育コストを削減するための独自マニュアルを作成し、導入企業に提供。こうした戦略も導入の後押しになっているそうだ。
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