くら寿司“しょうゆボトルなめ女”問題 「損害賠償請求しないほうがいい」と考える3つの理由スピン経済の歩き方(6/8 ページ)

» 2025年10月22日 07時30分 公開
[窪田順生ITmedia]

「法廷闘争の逆効果」を体験している「くら寿司」

 まだ「無添 くら寿司」という屋号だった2016年3月、ネット掲示板に「無添という表現はイカサマくさい」などという匿名の投稿がなされたことに対して、運営会社「くらコーポレーション」は名誉毀損(きそん)として、匿名人物の個人情報開示を求めて提訴した。現在、「無添」という言葉は屋号から消えたが、これは「くら寿司」の基本理念に沿った対応である。

くら寿司では、全ての食材において、化学調味料・人工甘味料・合成着色料・人工保存料を一切使用していません。それはお客さまの健康を最優先したいという、私たちの基本思想です。

くら寿司の安心へのこだわり(出典:同社公式Webサイト)

 そんな「魂」ともいうべきこだわりを、イカサマ呼ばわりされるのは、ある意味、しょうゆ差しをなめられるよりも腹立たしい。株主も「こんな誹謗中傷を放っておいて売り上げが下がったらどうするんだ! 厳正に対処せよ」と求めたに違いない。

 そこで、対象を「特定」してきっちり落とし前を付けると息巻いたわけだが、裁判所の判断は「意見・論評の範囲を超えた表現ではない」と棄却されてしまったのだ。

 先ほども述べたが、裁判という公の場で出された判決というのは、マスコミを通じて世間に広く公表されてお墨付きになる。つまり、「くら寿司の無添というのはイカサマくさい」という表現は名誉毀損ではなく、消費者の正当な論評・意見であると、司法が「お墨付き」を与えたようなものなのだ。

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