当時、ペロペロ少年に対し損害賠償を請求したスシローだったが、実は4カ月ほどで「和解」となり、訴えを取り下げている。理由は明らかにされていないが、至極まっとうな経営判断だ。というよりも、冷静に考えればハナから分かりきっていた結末だった。
筆者はスシローが「しょうゆ差しペロペロ少年を提訴した」という報道があった直後、本連載で企業危機管理の観点から「悪手」以外の何ものでもないとして、取り下げるべきだと提言した。
もちろん、SNSなどネット上ではボロカスに叩かれた。20年前にちょこっと在籍していた新聞社まで持ち出して「こんな奴はかばうな、左翼め」とか「義務教育からやり直せ」なんて感じで、まるで筆者自身がしょうゆ差しをペロペロしたかのように吊(つる)し上げられたものだ。
そういう“スシロー損害賠償バンザイ派”の主張は、主に「株主対策」だった。「この損失に対してちゃんと対応したのか」と株主から説明を求められるので、きっちりと損失分をペロペロ少年から徴収しないことには、経営陣が株主代表訴訟などで追及されることになる。
ただ、スシローがサクッと提訴を取り下げていることからも分かるように、それは本当の「危機」を経験したことがない評論家的な発想だ。このような形で迷惑行為をした消費者に最後まで損害賠償請求を行い、数千万円規模の負債を背負わせるケースは少ない。
なぜかというと、そのような民事裁判は、企業の経営面やブランド面において、ほとんど「プラス」にはならないからだ。
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