東京商工リサーチは、台風や地震などの自然災害や感染症、テロなどの不測の事態に備えたBCP(事業継続計画)の策定状況を調査した。その結果、「策定済み」と回答した企業の割合は28.4%(6084社中1732社)と3割に満たなかった。「策定する予定」と回答した企業は21.4%(1306社)で、両者を合わせても49.8%と半数に届かず、BCPへの取り組みが進んでいない実態が明らかになった。
BCPは、不測の事態が発生した際に中核事業を継続、または早期復旧させるための計画である。
規模別に見ると、「大企業」では61.8%(472社中292社)が「策定済み」と回答した一方、「中小企業」では25.6%(5612社中1440社)にとどまり、36.2ポイントもの差があった。事業規模が大きいほど、BCPの策定に積極的な傾向がみられた。
BCPを策定していない企業にその理由を尋ねたところ、「策定に必要なスキル・ノウハウがない」が52.2%で最も多く、半数を超えた。続いて「人材がいない」(43.8%)、「時間がない」(34.6%)と続いた。
BCP策定には専門知識やリソースが必要なため、企業規模を問わずスキル・人手・時間の確保が大きな課題となっており、外部専門家による支援の必要性が浮き彫りになった。
特に中小企業では、限られた人員で平常業務と両立する難しさが大きな課題だ。重要性を理解していても、実際の策定に踏み切れない企業が多いのが現状である。
東京商工リサーチは「中小企業ほどコロナ禍で経営体力を消耗し、さらに物価高によるコスト上昇や人手不足が収益を圧迫している」と分析している。
同社は「BCPの策定は急務だが、自社だけで対応できる範囲には限界がある」と指摘する。価格転嫁や生産拠点、データ管理などの地理的分散化といった分野では、行政や外部支援機関による支援も欠かせない。
また、「BCPは策定して終わりではなく、形骸化を防ぎ、時代に合わせて運用を見直す姿勢が求められる」としている。
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