東京商工リサーチが国内銀行104行を対象に実施した「中小企業等・地方公共団体向け貸出金残高」によると、2025年3月期の総貸出金残高は573兆8602億円(前年比4.0%増)となり、3月期としては2010年以降で過去最高を更新したことが分かった。
中小企業等向けの貸出金残高は過去最高の384兆4974億円(同2.8%増)で、2012年以降14年連続の増加となった。初めて380兆円を超えたことになる。
一方で、地方公共団体(以下、地公体)向けの貸出は39兆793億円(同0.1%減)と、2年連続で前年を下回った。
業態別に見ると、「大手行」は150兆567億円(前年比2.4%増)、「地方銀行」は190兆7769億円(同3.2%増)、「第二地銀」は43兆8514億円(同2.1%増)と、すべての業態で貸出金残高が増加した。
ただし、総貸出金に占める中小企業向け貸出金の比率は67.03%(前年67.81%)で、2年ぶりに低下。2010年以降で最低を記録した。地公体向け比率も6.80%(同7.09%)で、こちらも2年連続の低下となった。
円安に加え、物価や人件費、金利の上昇が重なり、中小企業の資金繰りは一段と厳しさを増している。経済活動は活発化しているものの、輸出産業と内需型産業の二極化が進み、銀行には企業支援の重要性がより強く求められている。
東京商工リサーチは「コロナ禍を経て、物価や人件費などのコスト上昇が企業の資金繰りを圧迫している。銀行は資金支援から企業再生支援へと舵を切りつつある」と分析する。
その上で「過剰債務の解消が進まない中小企業は多い。一方で、リスクの低い上場企業や地場優良企業への貸出を伸ばす動きが鮮明だ。金利上昇局面では前倒しの設備投資もあり、中小企業等向け貸出比率の低下につながっている。銀行には事業再生やM&A、廃業支援など多方面での支援強化が求められる」と指摘した。
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