かつては「乗っ取り」といった負のイメージが強かったが、いまや「友好的な事業引き継ぎ」として社会的に受け入れられるようになったことも、M&A増加の別の理由として挙げられる。
M&Aの仲介業者が増加しているし、中小企業庁も「事業承継・引継ぎ支援センター」を全国に整備するようになった。だが、同センターはあくまで「相談」できる公共サービスに過ぎず、M&Aの煩雑で専門的な契約実務をやってくれるわけではない。それならば、すべてをやってくれる仲介業者に頼んだ方が手っ取り早い、と考える人もいる。その考えも分からなくはない。
ただ、そこには落とし穴がある。仲介業者の中には、資格も免許もない、あやしい会社なども存在している。
例えば、後継者のいない中小企業のM&Aのマッチングなどを手掛ける、ある東京都の投資会社は、売却を希望する企業から資金管理の名目で現金をだまし取ったり、買収の手続きを進める中で現金を引き出してトンズラしたりしていたため、警察が捜査している。
こうした問題が出てくる理由は、M&Aの相手企業だけでなく、仲介業者の信用情報をきちんと審査していないからだ。
米国発の調査会社で、企業インテリジェンスを専門にするクロール(Kroll)の日本支社長、山﨑卓馬氏は「世界のグローバル企業は、ビジネスで深く関わる関係各所の会社状況や評判、内部環境について、企業インテリジェンスのサービスを使って徹底的に調査する。M&Aなどを安全に進めるために、つまり、自社を守るために動いている」と話す。
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