実際、価格設定の責任がマーケティング部門から財務部門に移る動きも出ている。時間ベース、使用量ベースの価格モデルを理解するには、財務的なスキルが必要だからだ。財務部門の役割は会計、つまり単位数や金額、費用を数えることから、オペレーション全体へと広がっている。
ただし、これが機能するには前提がある。他部門との信頼とパートナーシップだ。各チームが早い段階で財務部門を巻き込み、一緒に実現する方法を考えてくれる関係が必要だ。「その信頼がなければ、何も機能しない」
財務部門が各部門でシステムを選定した後に呼ばれるケースは失敗するとドブソン氏は強調。「ERPは優れた財務システムだが、収益化システムではない」
財務部門は、IT部門や営業部門、最高収益責任者(CRO)と協力しながら、収益化システムの選定を主導すべきだ。一つの部門だけで決めれば、各部門の要件が満たされない。
「今の要件は満たせるから」という妥協も危険だ。今日の「十分」は明日の制約になる。ビジネスが従量課金や成果ベースの価格設定に移行したいとき、システムがそれを許さなくなる。
重大な会計上の弱点、収益の修正再表示、投資家の信頼喪失――これらを引き起こすのが、不適切な収益化システムだ。「収益は正確でなければならない数字だ。それを裏付けるシステムがなければ、手作業やスプレッドシートに戻るか、ビジネスに良いことでも『No』と言わざるをえなくなる」
AI時代の価格設定は、成果ベース、従量ベース、階層型を組み合わせたハイブリッドモデルへと移行している。顧客のパイロット段階と本格展開では、適切な価格も変わる。価格は固定されたものではなく、継続的に進化する。
月次決算に20日かかるチームに、戦略を考える時間はない。レガシーシステムに縛られた財務部門は、新しい価格モデルを試すこともできない。
財務部門が締め作業から解放されれば、収益を報告するだけでなく創造する側に回れる。M&Aでは統合を主導し、買収を収益化につなげる。リアルタイムの財務データで、変化がまだ意味を持つうちに経営判断を支える。
ドブソン氏は強調する。財務部門がボトルネックから成長の設計者へと進化すること――それがAI時代の企業成長を決める、と。
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