フィットネスジムの会費や保育園の利用料滞納、病院の医療費未払い──少額の未収金問題は、業種を問わず経営を悩ませている。フィットネス業界だけでも未収金は年間70億〜210億円に上るとの試算もある。
厄介なのは、回収の手立てが限られていることだ。弁護士に依頼しても、費用の方が高くなるケースが多い。店舗スタッフによる督促電話は本来の業務が圧迫される上、心理的な負担も大きい。結果として多くの事業者が「少額だから仕方ない」と泣き寝入りしてきた。
この問題に、弁護士が立ち上げたスタートアップが切り込んでいる。オンライン上で債権者と債務者の「対話」を仲介し、分割払いなどの合意形成を支援するサービスを開始。未収金回収における、裁判でも泣き寝入りでもない「第3の選択肢」として導入企業が増えている。
少額債権の回収には、これまで主に3つの手法が使われてきた。
1つ目は自社での督促、あるいは督促業務の外注・自動化である。電話やSMS、メールで支払いを繰り返し促す。近年はLecto(レクト、東京都渋谷区)のように、債務者の属性や延滞パターンに応じて督促手段を自動で出し分けるツールを提供する企業も登場している。ただし、督促はあくまで「連絡を取る」手段であり、支払い条件の交渉や合意形成までは担えない。
2つ目は弁護士への委託である。弁護士名義の内容証明郵便を送れば、一定の回収効果は見込める。しかし少額債権の場合、弁護士費用が回収額を上回る「逆ザヤ」になりやすい。数万円の未払いに数十万円の費用をかけるわけにはいかない。
3つ目はサービサー(債権回収会社)への売却である。回収の見込みが薄い債権をまとめて売却し、帳簿から落とす方法だ。ただしサービサーは通常、大量の債権をまとめたバルク単位でしか買い取らない。数十件以下の少額債権を個別に売却するのは現実的ではなく、買取価格も債権額の10〜20%程度に目減りする。
これら3つの手法に共通するのは、「払う意思はあるが、すぐには払えない」債務者と向き合い、落としどころを探る機能を持たないことだ。ここに、ODR(Online Dispute Resolution、オンライン紛争解決)という新たな第3の選択肢が入り込む余地がある。
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