OneNegotiationが成り立つ鍵は、料金体系とオペレーション設計にある。
同サービスの料金は、月額固定費に加え、回収額の約25%を成功報酬として支払う仕組みだ。従来の弁護士委託では着手金だけで数万円かかり、少額債権では費用倒れになりやすかった。成功報酬型であれば、回収できなければ費用負担は最小限で済む。だからこそ「弁護士に頼むと赤字」だった少額債権でも、試してみる価値が生まれる。
もう一つの鍵は、弁護士の関与を最小限に抑えたオペレーション設計だ。OneNegotiationでは弁護士が話し合いをサポートする体制を整えているが、実際に弁護士が介入するのは10件に1件程度。大半の案件は、定型の選択肢をベースにしたシステム上のやり取りで完結する。
ここで問題になるのが、弁護士法72条である。弁護士または弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で法律事務を業として行うことは原則として禁じられている。ただし、同条には「他の法律に別段の定めがある場合は除く」という例外規定がある。
その「別段の定め」の一つが、ADR法(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律)だ。2004年に成立し2007年に施行された同法は、民間事業者が「和解の仲介」を行う手続きについて、法務大臣の認証を受けられる枠組みを整えた。認証を受けた事業者は、一定の要件のもとで紛争解決の仲介業務を行える。
AtoJは2022年7月に法務大臣認証を取得し、認証ADRとしてOneNegotiationを運営している。同社では弁護士が仲介役を務める体制を取りながら、定型化できるオペレーションをシステムに任せることで、多数の案件を効率的に処理できる仕組みを構築した。
創業者がともに弁護士であるAtoJは、この認証取得においても有利だった。「テクノロジー企業が法律領域に参入する」のではなく、「弁護士がテクノロジーを武器に市場を作る」という構図が、このビジネスの本質である。
冨田氏は「督促しても解決しなかった債権をODRに流し、それでも合意に至らなければサービサーに売却する。この流れを作ることで、これまで宙に浮いていた債権の出口ができる」と語る。
「山田くんに100円振り込んで」話しかけるだけで完了 住信SBI銀行、5人の若手が内製したAIエージェントの裏側
半年弱で「11万時間」削減を社員が実感 クレディセゾンが“AI活用のゴールを決めない”理由
「どれで払う?」は終わるのか PayPay×Visaが挑む“お金の出どころ”問題
「2026年にキャッシュレス先進国? 難しいだろう」――Visa日本社長が語る"後半戦"の現実Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング