ジム会費の滞納、どう取り立てる? 裁判でも泣き寝入りでもない、弁護士スタートアップが切り込む第3の選択肢(2/4 ページ)

» 2026年03月05日 08時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

「対話」で合意を引き出すODR

 ODRは、裁判所を介さずにオンライン上で紛争解決を図る仕組みである。欧米では電子商取引のトラブル解決などで普及が進み、日本でも法務省が2022年に推進方針を策定した。

 大阪市に本社を置くAtoJ(エートゥージェイ)が運営する「OneNegotiation」(ワンネゴ)は、法務大臣認証を取得した民間ODRサービスだ。代表を務めるのは弁護士の森理俊氏と冨田信雄氏。冨田氏は2万件超の少額債権回収に携わった経験を持ち、「誰も幸せにならない仕組みを変えたい」との思いから起業に至った。

sk AtoJの代表を務める弁護士の森理俊氏(左)と冨田信雄氏(右)(撮影:筆者)

 OneNegotiationの仕組みはシンプルである。債権者は名前、金額、連絡先の3項目を入力して申し立てる。所要時間は約5分。債務者にはSMS、メール、ハガキで通知が届く。届いた通知に記載されたURLから専用画面にアクセスすると、「一括で支払う」「分割で支払う」「支払えない理由を伝える」といった定型の選択肢が表示される。債務者は選択肢をタップするだけで、交渉のテーブルにつける。

sk OneNegotiationの利用フロー。債権者は「名前」「金額」「連絡先」の3項目を入力するだけで申し立てが完了する。債務者への通知から入金管理までシステム上で完結する(AtoJ提供)
sk 債務者に届く交渉画面。「今すぐクレジットカードで支払う」「毎月末日分割で支払います」「請求に身に覚えがありません」など、定型の選択肢をタップするだけで意思表示できる。電話や対面を避けたい債務者の心理的ハードルを下げる設計だ(AtoJ提供)

 店舗スタッフによる督促電話と決定的に異なるのは、債務者に「逃げ場」ではなく「出口」を提示している点だ。督促電話では「今すぐ払え」と迫られ、返答に困れば電話を切るか、居留守を使うしかない。しかし選択肢があれば、「分割なら払える」という意思表示が心理的ハードルなくできる。

sk 従来の電話督促とODRのプロセス比較。電話では「逃げ場がない」と感じた債務者が無視や着信拒否に走りやすいのに対し、ODRは「一括」「分割」「相談」といった選択肢を提示することで心理的ハードルを下げる(Geminiを用いて筆者作成)

 冨田氏は自らの経験を振り返り、「払う意思があるのに払えなくなったケースは多い。一方的な取り立てでは双方が疲弊するだけだ」と話す。OneNegotiationを導入した企業での解決率は50%で、ある企業では回収率が従来比150%に向上した。

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