現在、東京博善の火葬料金は約9万円なので利益は1万円だが、これも施設の老朽化などに備えて積み立てられている。民間企業ではあるものの、「経営難で施設維持が重荷になってきたので斎場を一つ閉鎖します」というような事業の縮小は許されないので、利益は将来的な設備投資に充てている。
「火葬料金9万円」についてはちょっと前に「火葬は公共インフラなのに高すぎる」と話題になったが、数千円で火葬を提供している公営火葬場は、公金を投入されているだけに過ぎない。高い安いという議論以前に、実際に1人の人間を荼毘に付するには、人件費、燃料費、機器の保守点検費用、消耗品の交換などで、かなりのコストがかかっているという「現実」があるのだ。
では、このような形で「見えるコスト」も上昇している中で「見えないコスト」――昔ながらの属人的な職人ワザの承継や人材定着といった課題をどうやって解決していくのか。
東京博善の施設部工事課で「火葬職人」として、多くの新人育成を行ってきた前出・斎場責任者は「会社全体で職人を育てる」ことを心がけているという。
「私が若いときは各斎場ごとに熟練の親方がいて、それぞれが独自の技術やノウハウを持っていたため、新人の育成方法にも細かな違いがありました。近年は定期異動を活発化させることで、職人技を全社的なものとして共有するようにしています」
東京博善に入社すると、まずは3カ月の現場研修がある。火葬炉の裏側の作業、火葬炉前での収骨作業、そして斎場全体の連絡係をそれぞれ1カ月ずつ、指導役の社員について徹底的に学ぶという。
「そこでは、周囲の先輩社員たちがサポートをします。例えば、桐ヶ谷斎場の場合は12基の火葬炉を3〜4人で担当していますので、新人が何か間違ったやり方をしたら隣にいる先輩が“この場合はこうしたほうがいい”とアドバイスをしたり、実際に目の前でやってみせたりするんです」(斎場責任者)
このようなOJT(On-the-Job Training)でしか職人の技術を伝えることができない最大の理由は、「火葬には一つとして同じやり方がない」ということがある。
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