例えば、先ほどのメンテナンスで使われていた耐火レンガ。東京博善の工事課によれば、5年前の平均単価は670円だったが、現在は820円前後に値上がりしているという。ほかにも、故人と遺族の「別れの場」になくてはならない備品のコストも上がっている。
東京博善は火葬能力の高い「ロストル式」という火葬炉を採用しており、棺を格子(ロストル)の上に置いて燃焼させ、その下にあるトレーに遺骨を落とす。これは「骨受け皿」と呼ばれ、遺族の前に運ばれてこの上で骨壷への収骨が行われるので、見たことがある人も多いだろう。
ただ、そんな重要な備品が「消耗品」だということはあまり知られていない。
「骨受け皿」は「骨受け」という金属の台に耐火レンガを敷き詰めたものだが、レンガは1カ月ほどで傷んだ箇所を交換する。これも職員が火葬業務の始まる前などに手作業で行う。さらに驚くのは金属台の「骨受け」もかなり頻繁に交換するということだ。同社が運営する斎場の責任者が言う。
「もって1カ月半ほどでしょうか。高熱でだんだん反ってきてしまうんです。少しくらいの変形には耐えられるように横には切れ目が入っているんですが、最終的にはヒビが入って割れてしまうんです」
この「骨受け」は20枚セットで約50万円。鋳物職人が一つ一つ手づくりで製造するため、やはりレンガ同様、近年は値上がりしているという。
1200万人都市・東京の火葬インフラを担う東京博善は、6つの斎場で年間13万5000件の火葬能力を保有する。火葬炉は平時でも朝から7回転、年末などの繁忙期は11回転にも及ぶときもある。火葬炉の修繕・周辺の備品の交換などにかかる費用もそれだけ積み上がっていくということだ。その厳しい現実がこれ以上ないほどよく分かる数字がある。
火葬1件当たりの原価は2万9000円。これに減価償却費、販管費、修繕積立金、税金などを加えると、1件当たりのコストは8万円である。
これは、東京博善が依頼した米大手コンサルティング会社A.T.カーニーによる試算で「火葬のトータルコスト」だ。他の民間斎場でも同程度のコストが発生していると推測されるという。
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