ただ、どれほど経験を積んでベテランになっても対処が難しい遺体があるという。それは火葬技術的な問題ではなく、メンタル面での困難さである。
「小さなお子さんのご遺体ですね。例えば、胎児の火葬はどれだけ経験を積んでいても精神的にやられてしまいます。きれいなご遺骨を残すために、大人と同じくらい時間をかけてゆっくり火を入れるんですが、そのときは本当に神経も使いますし、ご遺族の悲しみを思うといたたまれません」
ちなみに、胎児の場合は朝一番の火葬と決まっている。なぜかというと、遺体が小さいので、職員が炉の中に入って安置しなければならないからだ。炉は最高1200度にも達して冷却まで時間がかかるため、朝一番でなければ中に入ることはできない。
「交通事故で亡くなった小さなお子さんを火葬したときも、本当に辛かったです。私の子どもと同じくらいだったので……。こればかりは、どれほどベテランになっても慣れるものではありません」(斎場責任者)
未来のある子どもたちが亡くなってしまうという直視しがたい現実、そして遺族の深い悲しみや絶望を目の当たりにすることで、現場の職員たちのメンタルが疲弊してしまう。これも東京博善の「見えないコスト」だ。前出の経営幹部も言う。
「そんな精神的に大変なこともある仕事なのに、この社会で誰かがやらないといけないからと、火葬炉の裏で働いてくれている従業員たちには感謝しかありません。会社として心がけているのは、面接の段階でこのような精神的に大変な場面に遭遇する可能性があることもしっかりと説明して、ご本人はもちろんご家族も納得した上で、この仕事についていただくということです」
今、東京博善は人材採用で面接後に「トライアル」として3日間、火葬炉の裏や斎場での仕事を見学してもらう期間を設けている。そのような取り組みを続けてきたこともあって最近、少しずつではあるが、火葬職人の定着も進んでいる。中には「火葬場で働きたかった」という志をもって、面接にやって来た人もいるという。
「実は女性の火葬職人も入って、がんばってもらっています。火葬職人の世界は男性が多いイメージですが、今後は女性にも積極的に採用を広げていきたいと思っています」(経営幹部)
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