売れないのは小説か、届け方か 時代に逆行した小学館の文芸誌『GOAT』、累計42万部の衝撃(1/4 ページ)

» 2026年03月25日 07時30分 公開
[久保佳那ITmedia]

 2024年の創刊からわずか3号で累計発行部数42万部(2月18日時点)を突破し、話題を呼んでいる小学館の文芸誌『GOAT(ゴート)』。一般的な文芸誌の販売数が数千〜2万部であることを踏まえると、GOATの売れ行きがいかに規格外であるかが分かる。

 GOATの読者属性は約7割が女性で、中でも20〜30代の若い世代に多く読まれている。なぜ、本から遠ざかっているといわれる若者がGOATを読むのだろうか。創刊の経緯や若者から支持される理由について、GOAT編集長の三橋薫さんに話を聞いた。

GOAT編集長の三橋薫さん(画像:編集部撮影)

紙の文芸誌の休刊からはじまった、時代に逆行する挑戦

 GOAT誕生の背景は華々しいものではなかった。2023年10月、小学館が発行する紙の文芸誌『STORY BOX』がWebに移行し、小学館から紙の文芸誌は姿を消した。STORY BOXの編集長である三橋さんは、同僚の男性との立ち話でこんな会話をしていた。

 「やっぱり紙の文芸誌がなくなるのはさみしいね……。まったく新しいコンセプトで文芸誌を作れたらいいのに」

 そんな何気ない雑談が、後のGOAT誕生につながっていく。とはいえ当時は、紙の文芸誌が休刊したばかり。新たな紙の文芸誌を提案するのは、時流に逆らう動きでもあった。「また紙の文芸誌を作ることは難しいと思いましたが、やれるだけのことはやってみようと思いました」と三橋さんは振り返る。こうして、GOATの企画は水面下で動き始めた。

GOATの企画を水面下で進め始めた(画像:小学館プレスリリースより)

 「どの作家さんが書いてくれたら、新たな文芸誌の企画が実現するだろうかと考えました。すぐに頭に浮かんだのは、当社を代表する作家である西加奈子さんです。もし西さんが書いてくださったら、他の作家さんも続いてくれるのではないかと思いました」

 三橋さんは西さんを担当する先輩編集者に相談し、執筆を依頼する機会を得た。三橋さんが持参したのは『小学館の新文芸誌(仮)』というタイトルのA4の企画書1枚。

 「われながら、企画のまま終わってしまいそうなタイトルだと思いました」と三橋さんは笑う。

 西さんは「新しい文芸誌が出るなら応援したい」と賛同してくれた。多くの文芸誌が休刊していく現状をさみしく思っていたという。西さんと同様に、作品を物理的に読者に届けられる紙の文芸誌に愛着を持つ他の作家たちも書くことを約束してくれた。

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