「SaaSは人が使うものではなく、AIが使うものになってきた」
freeeの共同創業者で、2026年2月にCAIO(最高AI責任者)に就任した横路隆氏は、記者発表の場でこう述べている。その変化の起点にあるのが、MCPである。
MCPは、米Anthropicが提唱したオープンプロトコルだ。AIエージェントと外部のソフトウェアをつなぐ共通規格で、AIが業務ソフトを「操作する」ための手順書にあたる。提唱元はAnthropicだが、すでにOpenAI、Google、Microsoftが相次いで対応を表明しており、事実上の業界標準となった。
MCPを介してfreeeに接続すれば、「今月の未入金リストを出して」とチャットを送るだけで、AIがfreeeのAPI(ソフトウエアをつなぐ仕組み)を通じてデータを取得し、結果を返す。ユーザーはfreeeの管理画面を開く必要がない。
API自体は、MCP以前から存在していた。では、何が違うのか。freeeでMCPのハッカソンを主催する青山翔平氏は、「MCPがないと、AIはAPIのヘルプページを読みに行き、自分でコードを書いて実行しなければならない。同じ指示でも、日によって動きが変わってしまい、安定しない」と話す。実際、認証処理が抜け落ちてエラーになることもあったという。
MCPは、AIが読める形式で接続手順と認証方法をあらかじめ定義しておくことで、この不安定さを解消できる。
もう一つの要素が「Skills」(以下、スキル)と呼ばれる指示セットだ。freeeは約270本のAPIを提供しているが、全てをMCPの定義ファイルに詰め込むと情報量が膨大になり、AIの処理効率が落ちる。そこでMCP側にはAPIの接続口と認証の仕組みを置き、「どの業務にどのAPIをどう使うか」という情報はスキルに切り出した。
freeeのMCPの開発者である中島啓貴氏によれば「MCPが認証関係を担保し、スキルが業務の文脈を補う。この分業が実用性を上げた」という。
実際、当初freeeのMCPはスキルなしで開発が進んでいたが、AIの動作の精度が上がらずに停滞した。2025年秋にスキルの仕組みが整い併用したことで、実用レベルになったという経緯がある。
こうした流れはfreeeだけにとどまらない。2026年3月にはマネーフォワードが会計領域でMCP対応を発表。名刺管理のSansanは、MCPサーバを通じてMicrosoft CopilotやClaudeから名刺データや商談履歴を直接参照できる仕組みを提供し、住友商事がトライアル導入している。海外では決済のSquareがMCPで全APIを開放した。
このように「AIエージェントがサービスを使えるか」が、SaaSの選定基準に加わりつつあるのである。
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