MCPの価値を引き出すには、その裏にあるAPIの広さと深さが前提になる。freeeは会計・人事労務・請求書・工数管理・販売の5領域で約270本のAPIを公開している。同社は「5領域でオープンAPIを提供する国内唯一のバックオフィスSaaS企業」と自社を位置付けている。
他社もMCP対応を進めているが、現時点では会計領域が中心で、複数領域や設定のAPIまで広く開放している例はまだ限られる。
「データを参照できるだけでは、AIが実行できる作業の幅が限られる」と青山氏は話す。freeeは設定のマスターデータのAPIを開放しており、新規取引先の登録から請求書の発行まで、一連の業務をAIが完結させられるのが他社との違いだ。
なぜ、これほどまでに他社と差をつけることができたのか。その理由は、freeeのAPIが2018年から公開されていることにある。
中島氏によれば、「共同創業者の横路氏がCTO時代から、パブリックAPIの整備を戦略の一つに据えてきたことが大きい」という。
一度公開したAPIの仕様を維持し続けるには、セキュリティの担保や負荷対策が必要だ。freeeはそのための専任チームを置き、8年以上の投資を続けてきた。それが、MCPが盛り上がった今のタイミングで、freeeが先駆者となれている理由である。
そもそも、freeeのMCPの成り立ちは、非常にスピード感のあるものだった。その出発点は、中島氏が2025年2月に個人で作り始めたMCPサーバだ。スキルの仕組みが整った同年秋に実用レベルに達し、技術情報共有サイトで公開するとユーザーが使い始めた。横路氏がCAIOに就任したのを機に「公式OSSにしよう」と動き、約1カ月でfreeeの公式プロジェクトにソースコードを移管。今年3月2日に正式に公開した。
「速さが大事だ。半年何もしなければ追いつかれる」と青山氏は言う。スピード感をもって進める文化が、freeeがMCPにおいてトップクラスの地位を確立する要因となった。
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