米GoogleがAIモデルの新バージョンGemini3をリリースしたことで、AI業界の覇権を奪ったという主張が多い。しかし著名投資家のギャビン・ベーカー(Gavin Baker)氏は、米NVIDIA製GPU(画像処理半導体)の世代交代で生じた空白期に、Googleの独自開発半導体であるTPUがコストパフォーマンスで一時的に優位になっただけだと主張している。
NVIDIAの前世代の半導体Hopperは20万基しかつなげられなかった。次世代のBlackwellは、より多くつなげられるので巨大な頭脳になる。さらにBlackwell世代でもGB200からGB300という半導体になれば、コスパでもGoogleのTPUを上回るようになる。
コスパで一時的に一世を風靡した「Googleの三日天下は、その時に終わる」のだという。
ベーカー氏は、世界有数の資産運用会社である米Fidelityで、半導体・インターネット・消費者分野の大型ファンドを長年運用した。今は自身のヘッジファンド「Atreides Management」(アトレイデス・マネジメント)で、ヘッジファンドマネージャーとして活躍している。
半導体サプライチェーンや、データセンター、GPU/TPU技術に関する洞察を持ち、複雑な産業構造を「因果関係で説明する投資家」として高い評価を得ている人物だ。
AI業界の覇権争いは、AIモデルの領域では米OpenAIが、半導体の領域ではNVIDIAがそれぞれトップをを独走してきた。
しかしGoogleがTPUによってGemini3を開発したことで、コスパに優れたAIモデルが誕生。AIモデルの性能では拮抗した競争が続いているものの、独自半導体を持たないOpenAIは今後ますます不利になる可能性があるとして、Googleが覇権を握ったという見方が主流になっているわけだ。
しかしベーカー氏は、GoogleがTPUとGemini3のシナジーによってトップに躍り出たのは、NVIDIA半導体の新世代Blackwellの出荷が遅れたことが原因だと主張する。
Blackwellは前世代Hopperからの大幅なバージョンアップであり、Hopperでは20万基しか接続できなかったのに対し、Blackwellはそれをはるかに超える数の半導体を接続できるという。脳に例えるなら、シナプスとニューロンの数が大幅に増えたということになる。
半導体のネットワークというハードウエアが拡大されたのだから、その上に乗るソフトウエア、つまりAIモデルも大幅な性能アップが見込めることになる。さらにBlackwell世代が進化しGB300と呼ばれる半導体が実装されれば、コスパ面でもGoogleのTPUを圧倒するようになるとベーカー氏は指摘している。
問題は、そのハードウェアの進化をベースに「誰が最初にAIモデルを進化させられるか」だ。
半導体の世代交代にともなって、AIデータセンターの改築、新築も必要になる。なぜなら冷却装置は空冷から液冷へと変わり、消費電力も30kWから130kWに大幅に増えるので、電源設備も更新しなければならないからだ。
ラック重量も1トンから3トンに増えるので、データセンターの床の増強も必要になる。データセンターの構造そのものを変えないと導入できないわけだ。
モデル並列化やデータ並列化の設定の最適化や、ネットワーク構成の理解と調整など、エンジニアがチップの「癖」を学ぶ時間も必要になる。前回のAmpereと呼ばれるNVIDIA半導体の世代からHopperの世代への移行にも、半年から1年はかかったという。
そんな中、ベーカー氏が注目するのはイーロン・マスク氏が率いる米xAIだ。通常は2、3年はかかると言われるデータセンター構築を、マスク氏は古い工場施設を買い取り、わずか122日でデータセンターとして稼働させたという実績を持つ。
ベーカー氏は、Blackwell世代の半導体を使ってAIモデルの性能を最初に大きく引き出すのはxAIになると予測している。マスク氏は、次に出るxAIのAIモデルGrok5は「AGI(汎用人工知能)、もしくはそれと区別がつかないものになる」と語っている。
果たしてGrok5がどの程度の性能になるのか注目したいところだ。
本記事は、エクサウィザーズが法人向けChatGPT「exaBase 生成AI」の利用者向けに提供しているAI新聞「Google優位論は本当か?──Gavin Baker氏の主張」(2025年12月16日掲載)を、ITmedia ビジネスオンライン編集部で一部編集の上、転載したものです。
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