出前館の失速は、コロナ禍で膨張したフードデリバリー需要の反動そのものだ。
会社が公表する2026年8月期計画は売上高441億円(前期比11%増)、最終赤字40億円(前年同期は49億7100万円の赤字)。赤字幅は縮小させるものの、達成しても8期連続赤字という見通しで、いまだに黒字化の見通しが立たない。
第1四半期の実績はさらに厳しい。2026年8月期第一半期(2025年9〜11月)の売上高は89.89億円で前年同期比18.6%減、営業損失は16.81億円と、トップラインが2割近くも縮小している。
物価高で消費者が外食・中食の支出を絞り、店頭価格より割高になりがちなフードデリバリーを敬遠した結果だ。また、大手フードチェーンが独自で割安な配達やモバイルオーダーサービスの構築に乗り出す動きもある。横だけでなく縦、つまりこれまで顧客だった飲食チェーンとも競合しつつある。
市場が問題視しているのは規模ではなく、いわゆる「ユニットエコノミクス」、顧客当たりの採算性が改善する展望が見えないことだ。
ユニットエコノミクスは顧客1人または1社を獲得・維持するためのコストと、そこから得られる収益のバランスを指す言葉だ。
通常は売り上げを伸ばすか、コストカットすることで赤字を止めることを検討するのだが、出前館の場合は「どちらにせよ黒字にはならない」可能性がある。
もう一つ押さえておくべきことは、この5年で日本のフードデリバリー市場から競合が急速に消えた事実だ。
コロナ禍のピーク時、日本国内で少なくとも7〜8社がしのぎを削っていたフードデリバリー市場だが、ドイツ発のfoodpandaは日本参入からわずか1年5カ月、2022年1月に撤退。中国発のDiDi Foodも2022年5月でサービスを終了した。
国内発スタートアップのChompyは2023年5月にサービスを終了し、KDDIが2023年4月に子会社化したmenuも広告投下が鈍り、縮小均衡フェーズに入っているとみられている。
直近ではフィンランド発のWoltも2026年3月4日をもって日本市場から撤退している。親会社のDoorDashは日本と同時にカタール、シンガポール、ウズベキスタンの4市場から撤退し、リソースを成長市場に集中すると発表した。
Woltは配達品質・加盟店の質・UXで一部では根強いファンを抱えていたが、Uber Eatsと出前館の2大勢力を前に配送網が広がらず、デリバリー単体での採算が見通せなかった。
興味深いのは、Wolt撤退発表を受けた2026年2月26日、出前館の株価が一時急騰したことだ。同業脱落は加盟店・配達員・ユーザーの受け皿という意味で明確なプラス材料である。
ただし直後から株価は再び軟化しており、Woltの去った穴を埋めた程度では、本業の構造的な赤字を覆せないと市場が見ていることが分かる。
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