ワンマン運転の次の段階として、運転士の乗務を必要としない「完全無人運転」の実現が模索されている。鉄道に限らず、自動車の分野でも同様の動きが進むが、多くはまだ実証実験の段階にとどまっている。
鉄道では、先述した「マン=マシンシステム」をさらに発展させることで、無人化に近付いてきた。その中核を担うのがATO(自動列車運転装置)である。発車から加減速、停止までをシステムが制御し、運転操作の大半を自動化する仕組みだ。
大都市圏のワンマン運転では標準的に導入が進んでおり、運転士はホームの安全確認と発車操作を行う以外は、機器の監視が主な役割となる。ただし、線路への落下物や踏切での異常など、非常時には人による判断と操作が不可欠だ。
もともと鉄道は専用軌道を走行するため、不特定多数の車両が行き交う道路を走る自動車に比べ、自動運転との親和性は高い。このため、新交通システムと呼ばれる、専用軌道を走り運転を自動で制御する交通では、すでに完全無人運転が実用化されている。例えば、神戸新交通ポートライナーやゆりかもめなどがその代表例だ。
中でも神戸新交通ポートライナーは、1981年の開業時から無人運転で営業している日本初の事例として知られる。運転操作に加え、駅業務も自動化されており、こうした専用軌道と高度な自動制御を前提とするシステムでは、高頻度運転や安定した輸送サービスが実現されている。
一方で、一般的な鉄道での完全無人運転は実現していない。最大の障壁は、踏切の存在だ。外部と交差する構造が残る限り、不測の事態を完全に排除することは難しい。
こうした中、JR東日本は山手線で、2035年までに運転士が乗務しない自動運転システムの導入を目指す方針を示した。新幹線にも2030年代半ばの導入を計画しており、実現後は他路線への展開も視野に入れる。
山手線で無人運転が検討されているのは、この課題をクリアしやすい条件が整っているためである。同路線は他路線との直通運転がなく、踏切も1箇所のみで、その廃止も予定されている。
さらに、安全確保に向けた取り組みも進めている。車両には保安要員と乗客がやりとりできる連絡装置の設置を検討し、係員への訓練も強化することで、自動運転導入後もトラブルを未然に防ぐ体制の構築を図る。
こうした環境整備が進めば、無人運転の実現に大きく近づくとみられる。もっとも、踏切のない地下鉄の方が先行する可能性もあり、無人化の進展は路線ごとの条件に大きく左右される。
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