ヤン氏は2つの可能性を挙げる。
第一は政府が動くことだ。ただし本人も「可能性は高くない」と率直に語る。80歳代の政治家が急速に進化するAIを理解し、数年以内に制度改革を実現するのは難しいからだ。 より現実的なのは、富裕層やテック企業が直接社会に資金を還元する動きだという。
例えば マイケル・デル(Michael Dell)氏は、米テキサス州の低所得層の子どもたちの教育資金として約6億ドルを寄付した。投資家レイ・ダリオ(Ray Dalio)氏もコネチカット州で類似の取り組みを進めている。
また米AnthropicのCEOであるダリオ・アモデイ(Dario Amodei)氏は「AIは今後1〜5年でホワイトカラーのエントリーレベル職の50%を自動化する可能性がある」と認めた上で、AI企業が得る巨額の富の多くを社会に還元すべきだと公言している。では個人はどうすべきなのか。
ヤン氏とディアマンディス氏は、いくつかの提案を挙げている。個人はベーシックインカムの議論をSNSなどで広げ、政治家に無視できないテーマにすること。富裕層は政府を待たず、自分の地域で直接給付を行う「デル方式」を試すこと。親は「大学→就職」という一本道のキャリアモデルに固執せず、やり抜く力や社会性、手で何かを作る能力を育てること。
学生はAIに宿題をさせるのではなく「星間宇宙船を設計する」ような大胆な創造的なプロジェクトに使うこと。そしてCEOは短期の株価だけでなく、社会そのものが存続できるかどうかを考えるべきだという。
AIは、人類にかつてない豊かさをもたらす可能性を持つ。しかしその未来が天国になるか、地獄になるかは、まだ決まっていない。そしてヤン氏は言う。「残された時間は、おそらく3年ほどしかない」と。
本記事は、エクサウィザーズが法人向けChatGPT「exaBase 生成AI」の利用者向けに提供しているAI新聞「シンギュラリティは天国になるのか地獄になるのか」(2026年3月15日掲載)を、ITmedia ビジネスオンライン編集部で一部編集の上、転載したものです。
湯川鶴章
AIスタートアップのエクサウィザーズ AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。17年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(15年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(07年)、『ネットは新聞を殺すのか』(03年)などがある。
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