Anthropicが「Claude Cowork」で業務領域に踏み込み、SaaSが担っていた機能を汎用AI一つで代替しうる懸念が出てきた、いわゆるAnthropicショック。これを前にしたとき、SaaS企業の取り得る主要な道は3つに整理できる。
第1に、既存プロダクトのなかにAIエージェントを機能として組み込む路線だ。第2に、MCPサーバを公開し、自社SaaSを外部の汎用AIから「呼び出される側」として開く路線。第3にAIエージェントをUIの中心に据え、AIが業務を遂行する場所を抱え込む路線である。
3つは対立しない。組み合わせも可能で、どこに開発リソースを多く割くかが各社のポジションを決める。SaaSに組み込まれたAIエージェントは、あくまで人が主役の業務をサポートする位置付けだ。一方でAI Coworkのようなプロダクトは、人の労働そのものを代替する場所として設計される――というのが山田氏の見立てだ。
第1の組み込み戦略は、SaaS各社が真っ先に打ち出してきたものだ。既存SaaSの強みをAIで補完するもので、主役はSaaS、AIはそれを支える側に回る。
マネーフォワードが当初進めてきたのも、この路線にあたる。既存のクラウドサービスのなかに、「チームに加わり、共に働く頼れるAIエージェント」として複数のエージェントを順次組み込んできた。経費申請サポート、交際費精算、請求書ダウンロード代行、支払依頼申請サポート、未入金回収サポート、固定資産登録サポート、業績分析、リース契約の識別――担当者の作業を肩代わりするエージェントが、業務領域ごとに用意されている。
組み込み型の強みは、既存ユーザーがそのまま使え、業務ロジックに沿ってAIが動く点にある。使い勝手は既存のSaaSのままなので、学習コストもかからない。ただし、SaaSの在り方をAIで強化するという発想にとどまり、SaaSと人間の関係性そのものは従来と大きくは変わらない。全てのSaaSがAIに飲み込まれるわけではないし、SaaSの価値が消えるわけでもない。AIによって世界が大きく変わっていく流れに対しては、守りの戦略といえる。
同じ「組み込み型」でも各社の打ち出しには差がある。freeeも会計や人事労務にAIを埋め込んでいるが、対外的には2月発表のAIビジョン「freeeコックピット」といったMCP対応の打ち出しが強い。マネーフォワードはこの組み込みエージェント群で実績を積み上げつつ、AI Coworkで後述する第3の道にも踏み出した。
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