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マイル庶民化で激化する「地上戦」 決済額300万円のANA、生涯伴走のJALに見る勝算(1/4 ページ)

» 2026年05月28日 07時00分 公開
[シカマアキ,ITmedia]

 航空業界は今、為替や原油高、イラン情勢における地政学リスクなど、外部環境の荒波に翻弄されている。

 かつてないボラティリティ(価格変動率)に直面する中、従来の「空を飛ばなければ、稼げない」という航空会社のビジネスモデル自体が、経営の最大リスクとなっている状況だ。こうした中、日系大手のANAとJALの両社は、自社のマイルを基盤とした「金融・プラットフォーム企業」への変革に活路を見いだしている。

 「移動の提供」だけでは維持できないインフラコストを、いかにしてマイルプログラムをベースとした決済サービスを使いながら回収するのか。両社の戦略の違いから、マイル経済圏の展望を読み解く。

photo 日系の2大航空会社、ANA(奥)とJAL(以下、写真は筆者撮影)

マイルという負債を「武器」へ 自社経済圏を回す“循環通貨”に

 従来、マイルは顧客にとって、特典航空券に交換して使う、いわば「タダで飛行機に乗るための特典」が提供価値だった。

 当然、他社ポイントや電子マネー、物品など多岐にわたる交換方法を用意はしている。だが今も昔も「特典航空券への交換」こそが、最も還元率がいいのは間違いない。

 一方、航空会社側にとって、未使用のマイルはバランスシート(貸借対照表)上で「引当金」という名の負債(将来の持ち出し)として計上される重荷でもあった。

 だが今、マイルの定義を根本から変えようとしている。マイルを、光熱費の支払いや日用品の決済に充当させ、自社経済圏内における「循環通貨」へと進化させることで、負債ではなく将来的な収益に変える「戦略的資本」に転換する狙いだ。

 この「マイル経済圏」が強固になればなるほど、航空会社は「燃料費高騰による赤字転落」といった単純な収益構造から解放される。地上の経済圏で安定したキャッシュフローを稼ぎ出すことは、不確実性の高い航空業界における経営の「正解」の一つと言えるだろう。

photo ANAはエアドゥ(奥)など国内の中堅航空会社とも提携している(筆者撮影)

 だが、その手法において、ANAとJALは対照的なアプローチを見せた。

ANA「年間決済300万円」の踏み絵 上級会員を“金融”で選別

 ANAが4月に発表したスーパーフライヤーズカード(SFC)の改定は、そのドラスティックな姿勢を象徴している。

 従来は、年間の搭乗ポイントなどSFCの入会基準に一度到達した会員に対し、約1万円の年会費を支払い続けることで、ANAラウンジの無制限利用や優先チェックイン、優先搭乗といった特典を付与していた。それらの特典は、海外の提携航空会社でも提供していた。

 それを、2028年4月から導入する新ルールで改定したのだ。「ANAカードまたはANA Payでの年間決済額300万円以上」に到達しない顧客に対しては、ラウンジの利用権を失効させる。この厳しいルール改定は、実は「ラウンジの混雑緩和策」という以上の意味を持つ。「日常生活の決済をANAに委ねる顧客かどうか」を問う、実質的な“踏み絵”となっているのではないだろうか。

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