米半導体調査会社SemiAnalysis(セミアナリシス)は、GPU(画像処理半導体)レンタル市場に関する包括的なレポートを公開した。
業界標準機である米NVIDIAのH100の1年契約レンタル価格が、2025年10月の底値から約40%も急騰しているという。
H100の価格は1GPU時間当たり1.70ドルという底値から、2026年3月には2.35ドルまで跳ね上がった。オンデマンド型のレンタル在庫はあらゆる種別で売り切れ状態となっている。レポートは、現在の状況を「最終便の航空券を取り合うようなものだ」と表現した。
この価格高騰を引き起こした直接の引き金は、AIエージェント型ワークロードの爆発的な普及だ。多段階のタスクを自律的に反復するマルチエージェントの台頭が、計算需要を劇的な伸びへと押し上げたのである。
その象徴が米Anthropicのコーディングツール「Claude Code」だ。同社のARR(年間経常収益)は2025年末の90億ドルから、わずか3カ月で250億ドル超へと3倍近い急伸を見せており、この数字がそのままGPU不足の深刻さを裏付けている。
現在、市場の主導権は「ネオクラウド」と呼ばれるAI特化の新規クラウド事業者側に移っている。需給の逼迫を受け、彼らは顧客に対してより高い前払い比率や、長期のオフテイク契約を要求できる立場にある。
SemiAnalysisは、AI投資のROI(投資対効果)が5倍から10倍に達する現状では「価格上昇の余地はまだ十分にある」と分析している。そのため、需要を抑制する段階には至っておらず、今後もさらなる高騰が続くと予測した。
この「大GPU不足時代」の再来は、企業のAI戦略に重大な転換を迫っている。最優先事項となるのは、AIコストの可視化と最適化を図る「AI FinOps」(エーアイ・フィンオプス)の実装だ。米FinOps Foundationの調査によれば、AI支出を管理対象に含めている企業の割合は、2年前の31%から98%へと激増している。
また、計算資源の消費を格段に抑えられるSLM(小規模言語モデル)の導入も加速するだろう。タスクの重要度や複雑さに応じてモデルを使い分ける「モデルルーティング」戦略は、インフラ不足時代を生き抜くための現実的な生存策となる。性能の最大化を目指す「導入期」は終わり、コストパフォーマンスの最適化を冷徹に追求する「運用期」が本格的に始まったと言えるだろう。
本記事は、エクサウィザーズが法人向けChatGPT「exaBase 生成AI」の利用者向けに提供しているAI新聞「『大GPU不足時代』が再来 コスパ考慮のAI利用が不可欠に」(2026年4月6日掲載)を、ITmedia ビジネスオンライン編集部で一部編集の上、転載したものです。
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