労働者派遣ならではの課題も山積みで、その一つが不本意型派遣社員の存在です。正社員を希望しつつも、仕方なく派遣社員として働いている人もいます。派遣社員として就業した後に直接雇用へ切り替わる紹介予定派遣のようなサービスをもっと充実させれば、不本意型派遣社員を減らしていくことにつながるはずです。
また、法制度は極めて複雑です。労働者派遣事業を営むには、500ページを超える「労働者派遣事業関係業務取扱要領」に沿ってサービスを提供しなければなりません。海外と比較してもルールが独特なところがあります。
例えば、30日以内の日雇い派遣の原則禁止があります。雇用の不安定化を防ぐ観点から、派遣労働の長期利用を問題視する考え方は各国に共通しています。一方で、短期間の日雇い派遣を原則禁止しているのは、日本独自の規制といえます。
また、本人の生業収入または世帯年収が500万円以上であれば、日雇い派遣で就業することができるなどの例外が認められています。収入を増やすために働きたいのに、収入が多くなければ働けないというルールには多くの働き手から「矛盾している」と疑問の声が寄せられています。
働き手に不利に見える分かりにくい規制を見直してサービスを利用しやすくするには、労働者派遣業界が社会からの信頼を得て、事業現場の実情を踏まえた意見に耳を傾けてもらう必要があります
しかしながら、カルテル疑惑のような事態が起きてしまうと、派遣業界がどれだけ真摯な思いで要望したとしても「金儲(もう)けのために規制緩和を求めている」と見なされてしまいます。
労働者派遣はニッチなニーズを満たす特殊なサービスですが、日本の雇用システムにポジティブな変革をもたらす可能性も秘めています。例えば、現在増えている無期雇用派遣。限定した職務内容を軸に契約を交わす労働者派遣は、ジョブ型雇用の典型です。
ところが、日本の法制度だと無期雇用はメンバーシップ型の正社員が基本で、ジョブ型雇用を前提とした形では整備されていません。現状のまま無期雇用派遣が増えていくと、派遣先が確保できなくなった際の雇用継続などを巡ってトラブルが生じる懸念があります。無期雇用派遣を巡る法制度の整備は、日本の雇用システム全体の刷新にもつながる可能性があります。
労働者派遣というサービスはこの40年で社会に定着したものの、課題が多々あります。それらの課題と正面から向き合いつつ、サービスが持つ機能をどう社会のために生かしていくかが、労働者派遣のこれからを考える上で重要になります。
一方、サービスが「派遣事業者の利益を増やす道具」としか見なされなければ、派遣業界自体の存在意義が問われることになります。それは、年越し派遣村や派遣切り報道以降、社会からずっと突き付けられてきた宿題であり、大手派遣事業者のカルテル疑惑に向けられている視線の重みとなって表れているのではないでしょうか。
ワークスタイル研究家。1973年三重県津市生まれ。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者、業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員の他、経営企画・人事・広報部門等の役員・管理職を歴任。所長として立ち上げた調査機関『しゅふJOB総研』では、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ5万人以上の声を調査。レポートは300本を超える。雇用労働分野に20年以上携わり、厚生労働省委託事業検討会委員等も務める。NHK「あさイチ」「クローズアップ現代」他メディア出演多数。
現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構 非常勤監査役の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等に従事。日本労務学会員。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。
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